「ロシアのスパイかもしれないと思っていた」
警視庁公安部が、不正競争防止法違反の疑いで元ソフトバンク部長・荒木豊(48)容疑者を逮捕したのは1月25日のこと。
「荒木容疑者は、昨年2月、勤務していたソフトバンクの社内サーバーに不正にアクセスし、営業秘密の情報などを取得。記録媒体にコピーした情報を、ロシア通商代表部の外交官に渡したとされています。内偵を進めていた公安部が昨年12月、ソフトバンクへ家宅捜索に入り、荒木容疑者は退職。現在は取り調べに対して、『小遣い稼ぎのためにやった』などと供述しています」(社会部記者)
ロシア側と荒木容疑者の接点は、昨年2月よりも前からあったという。
表に出るスパイ行為は「氷山の一角」
「荒木容疑者は、もともと貿易関連や経済関係の業務を担うロシア大使館の組織の一つであるロシア通商代表部の職員ら複数名と面識があり、飲食をともにしていた。だが、ロシア側は荒木容疑者に素性を明かしていなかったのです。17年、40代のロシア通商代表部の一人は、帰国し、その後容疑者は、通商代表部幹部で50代の外交官などと交流を重ねてきたようです」(同前)
荒木容疑者は、通商代表部の幹部らとの飲食のほか、情報提供の見返りとして複数回、現金を受け取ったこともわかっている。
このようなスパイ行為が日本で表面化するのは稀なケースだが、公安関係者によれば、「表に出てくるような話は氷山の一角だ」と明かす。
スパイを外交官の身分で入国させるのは「常套手段」
ロシアによる日本でのスパイ活動が大きく取り沙汰されたケースの一つに、2015年に起きた自衛隊幹部による資料提供事件がある。
陸自の元陸将や、その部下らが、ロシア大使館の元武官である情報機関員に内部資料の『教範』を提供していたことが明るみに出た。
「この事件では、ロシアの『参謀本部情報総局』(GRU)が関与したと言われています。軍の機密情報を主に集める情報機関ですが、企業の情報収集などを行う情報機関『ロシア対外情報局』(SVR)なども水面下で諜報活動を行っている。ロシアに限りませんが、情報機関の人間を外交官の身分で他国に入国させるというのは常套手段」(同前)