ここに興味深い資料がある。前出の公安関係者が入手したという同セミナーの案内状の下書き資料だ。ロシア人が作成したそうで、いくつか誤字もあるが、露日経済協議会が、どういう組織なのかが紹介されている。
〈露日経済協議会は、ロシアの有力な政治家、官僚グループの発案でロシア商工会議所の後援のもとに2004年に設立〉
〈議長は、S.V.ステパーシン・ロシア連邦会計検査院総裁です。露日経済協議会発起人会議長は、E.M.プリマコフ・ロシア商工会議所議長です。露日経済協議会発世話人会議には、ロシア国内外で高名な人物が名を連ね、V.I.コージン・ロシア大統領総務部長、R.Z.ハミートフ・ロシア水資源連邦局長、B.S.アリョーシン・アフト・ヴァズ総支配人、そして科学アカデミー正会員、M.V.ロマノーソフ名称モスクワ国立大学総長であるV.A.サドーヴニチイが含まれます〉
スパイ行為はプーチンの私腹を肥やすか
このセミナーが開かれた年、ロシア国内は経済が低迷しており、資金繰りに苦しむ企業に国が資金援助を行うなどしていた。
「翌09年、プーチン首相が日本に来日しています。訪日の最重要課題は、当然、経済関係の強化でした。そのプーチンに随行してきたのが、露日経済協議会です。彼らの目的は、日本の資金を多くロシアへ投資させること。そして、スパイたちは、この協議会をはじめロシア系団体や企業に紛れ込んで、諜報活動を行うのです。日本国内の政治や経済の動向を探ったり、日本企業の技術などを入手する活動をしていると見られていました。
ソチ五輪では、一部の勢力から、『ソチ五輪はプーチンの私的プロジェクトだ』と批判されていたように、プーチン大統領と近い企業ばかりが富を得た。つまり、五輪はプーチン大統領の政治闘争の一つであり、当時、その延長線上に、スパイ行為があったと考えていい」(同前)
ソフトバンクの漏洩事件を巡っては、警視庁が、通商代表部幹部の男と、既に帰国した代表部職員の出頭を要請している。
「陸自の漏洩のときも、出頭要請をしたものの、ロシア側は応じませんでしたから、今回も要請に応じるとは考え難い」(前出・記者)
今回のスパイ事件が日本で大きく報じられると、在日ロシア大使館は1月25日、フェイスブック上で、日本は「スパイマニア」としたうえで、遺憾の意を表明。しかし、前出・公安関係者によれば、「こうした行為は今も日本のどこかで行われているはずだ」と指摘するのだ。