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何度も居場所を聞き出そうとした

 清美さんがいなくなったことを知った松永と緒方は、半ばパニック状態になった。当時の福岡県警担当記者は説明する。

「まず3月6日の午前中に『ミヤザキ』を名乗る松永が祖父母宅に何度も電話をかけ、清美さんが家にいるのではないかと押し問答を繰り返しました。続いて夕方になると『モリ』を名乗る緒方が、前回の逃走時に清美さんが祖父母宅に残していた衣服を返して欲しいと、門司区のマンションを訪ねています。その後も松永と緒方は何度も祖父母宅に電話をかけ、居場所を聞き出そうと食い下がっていました。それでも祖父母が『知らない』としらを切り続けると、今度は清美さんにいままでかかった、数百万円の生活費を支払えと凄んだそうです。また、7日の未明から午前中にかけて、松永は祖母の娘である、清美さんの伯母を伴って祖父母宅を訪れて居座り、居場所を教えろと粘っています」

 祖父母は再婚しており、松永が連れて来た伯母の橋田由美さん(仮名)と清美さんの父親である由紀夫さんは、母方(祖母)の姉と弟という間柄だった。

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©文藝春秋

緊急逮捕、男児4人を保護

 3月7日の夕方、小倉北署では清美さんの証言に信憑性があり、立件が可能であると判断。その段階で氏名不詳の松永と緒方の逮捕に向けたゴーサインが出された。そして、清美さんが家にいると聞かされ、祖父母宅にやってきたミヤザキ(松永)とモリ(緒方)は、午後9時8分に監禁・傷害容疑で身元不詳のまま緊急逮捕された。その際に2人が取り乱すことはなく、粛々と連行されたという。

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 その2時間後の午後11時、捜査員は北九州市小倉北区泉台にある『泉台マンション(仮名)』で、男児4人を保護している。内訳は逮捕された男女の子供と見られる9歳と5歳の男児、さらに2人が預かっていたという6歳の双子の男児2人だった。なお、9歳の男児は「イシマルカツキ」、5歳の男児は「イシマルマナブ」の偽名を名乗っていた。この詳細については改めて触れる。

4ヶ所の家宅捜索

 捜査員は松永と緒方の逮捕を受けて、小倉北区片野の『片野マンション(仮名)』と『東篠崎マンション』、さらに前述の『泉台マンション』に入ったが、片野マンションは荷物が梱包されて引っ越し直前だった。また、東篠崎マンションと泉台マンションから目ぼしい家財道具は発見されていない。これら3カ所を含め、門司区の祖父母宅を加えた4カ所では、3月8日に改めて家宅捜索が行われた。

 なお、8日の午前10時から行われた小倉北署の副署長によるレク(チャー)では、氏名不詳の松永を「A」、緒方を「B」としたうえで、「Aはスーツ姿でネクタイ着用。一般的なピシッとしたサラリーマン風。Bも身なりは普通。署に来てからは顔が真っ青。いずれも暴力団のような感じではまったくない」との説明がなされている。