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「宇宙スリラー」の傑作登場 『ライフ』のB級感こそ夏に似合う

「宇宙スリラー」の傑作登場 『ライフ』のB級感こそ夏に似合う

2017/07/07

genre : エンタメ, 映画

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 今年上半期は、地球にやってきた宇宙人の意図を解読する『メッセージ』(ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督)が話題になったほか、下半期も宇宙が舞台の大作映画があります。9月にはリドリー・スコット監督がメガホンを取った、エイリアン誕生の原点を描く『エイリアン:コヴェナント』が公開予定。『エイリアン』シリーズは監督が次々と代わっているので、御大自身が手掛けるのはじつに1作目以来、38年ぶり。

エイリアンと抱き合う「エイリアン」主演のトム・スケリット ©getty

ややこしいけど復習して鑑賞したい「エイリアン」シリーズ

 とはいえ、2012年にリドリー・スコットは『プロメテウス』という、『エイリアン』(79年)の前日譚を監督しています。今回の『エイリアン:コヴェナント』は『プロメテウス』の続編とのこと。ややこしいですね。でも『エイリアン』はやはり映画史に残る作品なので、シリーズを復習して鑑賞したい作品です。

 基本的に、宇宙映画というのは大抵ほのぼのとはしていなくて、危険や恐怖と紙一重です。筆者にとって長年、宇宙に対するトラウマ映画となっていたのは、幼稚園の頃にテレビで見た『007は二度死ぬ』(67年)でした。どちらかというと、丹波哲郎やトンデモ日本が出てくる笑える映画として有名です。しかし冒頭で船外作業中の宇宙飛行士が、宇宙船とつなぐ紐であるテザーを切断されて、そのまま宇宙に流されていってしまうシーンは、猛烈に虚空の孤独や絶望を感じさせて怖かったです。

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真田広之がシステム・エンジニア役で登場する『ライフ』

 そしてもちろん、同様のシーンで有名なのは『2001年宇宙の旅』(68年)。これも小学生の時に見てドン引きです。命綱を切られ、宇宙船からどんどん遠ざかっていく無力な宇宙飛行士の姿は、恐怖のさらなる上塗りになりました。宇宙の広大さというのは、宇宙船内以外は死の危うさにつながるという意味で、広場恐怖症と、閉所恐怖症を同時に起こさせるものです。そしてこの映画の、宇宙船を制御する人工知能HAL9000が、乗組員を殺してしまう暴走。でもHALに対する感覚は、人間以外に依存する不安や、人工知能が破綻する危機感より、今まで正常に話していた知人の言動がおかしくなっていく、コミュニケーションが図れなくなる狂気への恐怖に近いです。

『2001年宇宙の旅』のライブ鑑賞会 ©getty

 そして連綿と続く宇宙スリラーの新作。7月8日公開の『ライフ』も、宇宙で恐怖に見舞われるスリラーです。出演は『デッドプール』(16年)のライアン・レイノルズや、『ナイトクローラー』(15年)のジェイク・ギレンホール、『ミッション:インポッシブル ローグ・ネイション』(15年)のレベッカ・ファーガソンと、豪華な俳優が集う作品。日本からも、海外進出が続く真田広之が、システム・エンジニアの主要な役で出演しています。

『ライフ』7月8日(土)全国ロードショー