「字幕を読まない」アメリカ人が韓国語を学ぶまでに
「字幕を読まない国民」と言われてきたアメリカ人だが、インターネットの普及によって外国語コンテンツへの関心が高まっている。たとえば、2019年、アメリカのNetflixで最も人気だったノンフィクション番組は近藤麻理恵が日本語で話すシーンが多い『KonMari ~人生がときめく片づけの魔法~』だった。
そうしたグローバル潮流のなか、東西をまたぐかたちで存在感を示す存在こそ、K-POPが代表するコリアン・カルチャーだ。自国語の歌詞を貫くBTSなどが人気を高めたこともあり、韓国語を学ぶアメリカ人も増えているようで、全国の大学・カレッジを対象とした2016年調査では「第2ヶ国語学習コース選択者」増加率ランキングのトップにおどりでている。
しかしながら、いくら韓国カルチャーが人気といえど、劇場映画である『パラサイト』がここまでの人気を獲得したことは「予想外」のこととして扱われており、ヒットの理由がさまざまな観点から探られている。英語圏でまず大きかったものは、若者を中心としたインターネット人気だ。
大ヒットの理由1:オンラインの考察合戦
公式より「ネタバレ禁止」ルールが敷かれた本作には、オンラインの「考察」合戦が盛り上がる要素が詰まっている。第一に、秀でたミステリとして、初見では気づきづらい巧妙な仕掛けが張り巡らされている。それに加えて、メインストーリー自体、韓国社会に精通した人でなければ意味が掴めない描写がかなり多いのだ。
『パラサイト』旋風の面白さは、世界中でヒットを遂げたにもかかわらず、作品自体は韓国社会のローカル性が濃い点にある。たとえば、日本でもお馴染みの、北朝鮮の有名女性アナウンサー、リ・チュニ。あるキャラクターが彼女の喋り方を真似て「そっくり」だと絶賛されるシーンが入るのだが、元ネタを知らない場合、よくわからないやり取りになっているかもしれない。
日本人の多くが理解できないであろう描写も多い。たとえば、主人公一家の父親が生業にしていた「台湾カステラ」。これは、2010年代に韓国でブームとなり自営業の専門店が乱立したものの、TV局が悪評を流したことで流行が終わった結果、多くの失業者を生み出した食品である。劇中、このカステラ失業の話題は何度か登場するものの、その不条理ないきさつが説明されることはない。