話題の映画「パラサイト」のテーマにもなっている韓国の“格差社会”。若者が「ヘル朝鮮」と口にしてしまうのはなぜなのか。その過酷な実態を『韓国を支配する「空気」の研究』より紹介します。
なぜ若者たちは「曹国スキャンダル」に激怒したのか
2019年夏、またもや韓国の人々を憤激させる事件が起きた。事件の主人公は、文在寅の最側近で法相に任命される直前の曹国だった。曹国の娘が韓国の名門、高麗大に入学する際に不正行為があったという指摘が出たためだ。日本でもワイドショーが大騒ぎし、「むいてもむいても、疑惑が出てくるタマネギ男」などと揶揄したが、韓国人が一番怒ったのは、間違いなく、この長女の入学不正疑惑だった。
高麗大ではスキャンダルが出た2019年8月から、毎週末に大学内で「ロウソクの灯集会」が開かれた。100人前後が毎回集まり、「彼女には学生生活を楽しむ資格はなかった」「公正ではない入学を許すな」などと怒りの声を上げた。
韓国人が最も怒る不正は“入学”と“徴兵”
韓国人が最も怒る不正は入学と徴兵を巡る問題だと、韓国の知人たちは口をそろえる。誰もが良い大学に入りたい、誰もが徴兵から逃れたいと思うなか、ズルをする人間は許せない。特に、曹国の娘の場合、入った大学が、「韓国の早稲田」とか、「SKY(ソウル大、高麗大、延世大の略称。3校が最難関とされる)の一角」と呼ばれる高麗大だけに、若い人たちの怒りはすさまじかった。
「だって、世の中の親はみんな、子どもをSKYに入れようとするんですよ。不正を働いたのが事実なら、その人の代わりに落ちた人がいたわけでしょ。みな、自分のことみたいに怒っていますよ」
高麗大OBの40代の知人はこう言った。知人が高麗大に合格したのは二十数年前。まだ、インターネットが十分発達していない時期だった。地方在住のため、合格発表の日に大学の入試課に電話して尋ねたところ、「入学式に来てくださいね」と告げられた。知人の横で耳をくっつけるようにして聞いていた両親はその瞬間飛び上がり、泣いて喜んだという。
それぐらい過酷な受験戦争だった。