「いろんな銃を撃ちまくることができて、溜まっていたものを全部吐き出したような気分で、スカッとした。どうせ刑務所に行くんだろうから、代わりにベトナムに行きたい。好きなガンを思いっきり撃つことができるなら死んでもいい」
今から半世紀以上前、東京・渋谷の駅前で市街戦が起きた。18歳の少年が人質を盾に銃砲店に立てこもり、無闇やたらに銃を乱射したのだ。動員された警察は延べ7千人、興味本位で現場に集まった野次馬が3千人、負傷者18人。前代未聞の事件を起こした少年の犯行動機は銃に対する異常なまでの執着だった。
高度経済成長期に起きた事件の真相を、鉄人社の新刊『高度経済成長期の日本で起きた37の怖い事件』より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/続きを読む)
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銃の魔力に取り憑かれた少年
後に事件を起こす片桐操は1947年(昭和22年)、東京都世田谷区に4人兄弟の末っ子として生まれた。物心ついたころから銃に強い関心を持ち、ミリタリー雑誌『丸』を愛読。体格には恵まれていたが、性格は極めて内向的で、傘の柄と花火の火薬でビー玉を飛ばす手製の銃を作るなど、とても子供とは思えない趣味に没頭した。
旧日本陸軍の上等兵という軍歴を持つ父親はそんな息子を理解し、高価なモデルガンを買い与える。ただし、「人は殺すな。人を殺すくらいならまず自分が死ね」との警告も忘れなかった。
地元の中学に進学してからは作家・大藪春彦(1935-1996)の『ウィンチェスターM70』『野獣死すべし』などのハードボイルド小説に大きな影響を受ける一方、アメリカの銃雑誌『ガン・ダイジェスト』や『シューターズ・バイブル』を入手し、辞書を片手に英文を翻訳し銃の専門知識を習得。
7歳上の長姉は趣味に没頭する弟を見て、中学卒業祝いに3万5千円(現在の貨幣価値で15万~20万円)もする本物の22口径のライフル銃「マスターライフルNO3」と4千円の照準器をプレゼントしている。この銃が後に犯行に使用されることになるとは、姉は想像すらしていなかった。
