ライアン小川のストッパー転向の経緯
――今月は原樹理の話だけをずっとしていたいです(笑)。さて、誰もが驚いた「ライアン小川のストッパー転向」。この経緯を教えてください。
伊藤 交流戦の後半、石山泰稚、ルーキ、秋吉亮とそれぞれ調子を崩したりして、リリーフが不安定な状態が続いていました。そうなると、ゲームプランにおいて逆算ができなくなってくるんです。そこで、もう一人ビシッと抑えてくれる人材を考えていました。その条件としては、「真っ直ぐが速いこと」「コントロールがいいこと」「ボールに力があること」「落ちるボールがあること」、つまり「三振が取れること」、ここで頭に浮かんだのが小川でした。
――でも、先発投手が慢性的に不足している状況の中で、小川をリリーフに回せば、さらに先発ローテーションが苦しくなるのは自明の理ですよね?
伊藤 小川ならば一週間に一度先発をして、必ず長いイニングを投げて、試合を作ってくれます。使う側としては計算できるし、非常にラクです。去年のような先発事情であれば、小川の配置転換は考えなかったと思います。でも、今年はブキャナンがいて、原樹理、星知弥がいて、石川雅規もローテーションを守っている。そして、山中浩史も故障から帰ってくるめどが立った。さらに、由規も順調に回復している。ここに小川が加わるのがベストなのはわかっているけど、この現状を打破するための起爆剤として「小川リリーフ」を考えていて、ある日、真中満監督と話していた時に、監督が「小川にさせてみるか」とポツリと言いました。それが交流戦の終盤のことでした。
――伊藤コーチが考えていた「小川リリーフ転向」を、真中監督も考えていた?
伊藤 チームのエース格ですから、僕としてはものすごく葛藤がありました。でも、小川が左の脇腹を痛めてファームで調整しているときに、監督と話し合ってみると考えが一致しました。そこで、まずは高津臣吾二軍監督から本人に告げてもらいました。その上で、僕から本人に伝えました。これがうまくハマれば、いい形になると思います。でも、もしもハマらなければ……。正直大きな賭けだと思います。でも、チームは最下位なのだから、これ以上下がることはないと開き直って、思い切ったことをしなければ何も変えられない。もちろん不安はありますけれども、「勝利の形」を作ることで、選手たちにも安心感を与えたいという狙いもあります。
――昨年からずっと奮闘してきたリリーフエース・秋吉亮については?
伊藤 去年から今年にかけて、秋吉はこちらの期待には十分に応えてくれました。でも、彼の本来の持ち味はクローザーよりもセットアッパーだと思います。小川に最後を任せることによって、秋吉が本来の持ち場であるセットアッパーに戻って、さらに力を発揮してくれることを願っています(※その数日後、秋吉は右肩肉離れのため戦線離脱……)。
――さて、先月予告した「今月のルーキ」ですが、6月のルーキはいかがでしたか?
伊藤 いよいよ始まる「今月のルーキ」(笑)。でも、6月のルーキは芳しくなかったですね。同じ失敗を何度も繰り返しましたね。ボール自体は、日本人にはないすごいボールを投げるんだけど、僕の教育不足でなかなか伝わらない。歯がゆい思いばかりです。
――「同じ失敗」とは、どんな失敗ですか?
伊藤 「ここは慎重に」という場面で、簡単にストライクを取りに行ったり、キャッチャーの配球の意図をきちんと理解していなかったり……。それがアメリカの野球なのかもしれないけれど、ちょっと幼稚な部分がありますね。せっかくいい球を持っているだけに、その点が歯がゆいし、地道に話をして何度も繰り返し伝えている点です。
――最後に、巻き返しに向けて、7月の展望を教えてください。
伊藤 小川の配置転換がハマればある程度、勝利の形ができてくるはずです。ゲームプランが見えてくると、他のリリーフ陣、近藤、石山、松岡、山本がより一層、いいコンディションで起用できるようになります。連敗中のファンの方からの声援は本当にありがたかったし、結果を出せずに本当に申し訳なかったです。7月、8月で何とか巻き返します。投手陣は腕がちぎれてもいいという覚悟で投げています。ぜひ、これからも応援をお願いします。
――来月は、明るい話題で陽気に酒を飲みたいです!
伊藤 ホンマにそうやね。7月は巻き返します!
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