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武田砂鉄×ジェーン・スー#4「EXILEの“正しさ”にかつてのコンプレックスが再燃」

『コンプレックス文化論』発売記念対談

2017/07/16
note

スー 自己否定につながると(笑)。

武田 だからOKなんです。OKなんです、って超偉そうですけれど。

スー 「おい、Bのくせに!」って言えないですもんね。それって完全に、返す刀で自分が斬られるから。でも、容姿がいい人はいい人で、つまらないと思われているんじゃないかとか、どこまで頑張ったらこれが自分の努力や才能の賜物だって信じてもらえるんだろうかって、コンプレックスがあるんでしょうけれど。

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武田 貯金1億円の人が2億円の人に嫉妬するという話に、「そんなん、どうでもいいよ」と思うように、イケメンと、もっとハイグレードなイケメンの争いって、こっちは管轄外です。でも彼らにしてみたら「もっと上」の争いで生じるコンプレックスがあるのでしょう。その競り合いに、世の中はとにかく無関心。

スー でも、人権的に考えたら、そこを認めるべきなんですよね。ただ、コンプレックスチームから言うと、(才能や美貌などを)持ってる人が困っていては、自分たちの理論が破綻する。「持ってる人は困ってちゃいけない!」というむちゃくちゃな話(笑)。絶対的に幸せで何の問題もない、でいてくれないと、私たちが今そうではない理由が存在しなくなっちゃう。君たちが幸せじゃないと、理屈が破綻する、という。

©文藝春秋

武田 逆に言えば、こっちの前提を崩す一撃を、あっちが持っているというのは、恐ろしいですよ。だから「余計な事を言うなよ、お前たち!」と牽制する。

スー 純然たる富の象徴でいてくれないと困るんですよ。辻褄が合わなくなるから。ものすごい勝手ですよね。

(5)に続く


インタビュー構成 武田砂鉄

コンプレックス文化論

武田 砂鉄(著)

文藝春秋
2017年7月14日 発売

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