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大ヒット中の『映像研』、オタクが抗えない4つの魅力

2020/02/09
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魅力3:プロ意識たかっ!  頼りがいのある金森さん

 3人の会話のテンポや間もいい。浅草の独特な語尾と、浅草を演じる女優・伊藤沙莉の低めの声がマッチしていて引き込まれる。浅草と水崎が、自分の描きたい絵やつけたい演出について、弾丸のように思いを放射するのに対し、金森がつっこみや質問を挟む。そこでアニメ制作に必要な道具の用途が分かったりするのだが、彼女の役割は単なる説明役にとどまらない。進行やタスク管理に厳しく、関係各所へのネゴシエーション能力もある。

 制作現場で感覚的なものを一致させてゼロからアニメーションを作り上げていく作業は、とてつもない困難を伴うに違いない。そのなかで、クリエイターの意見を尊重しつつ、その思いと現実をトレードオフしながら完成に近づけていく作業は、彼女がいなければなしえないだろう。少しずつ絵が動いていくというプリミティブな面白さと制作現場のとてつもない苦労。その両方が沁みて、本作を見ていると不思議な涙がこぼれてくる。

 ちなみに、金森の好物は牛乳で、作中にはたびたび「〇〇する代わりに牛乳2本」といった会話が登場する。まるで、通貨のように。金森は金儲けが好きという設定だが、金銭感覚からは高校生らしさが覗く。そこもきっちり描かれているため、カネ、カネ言おうがなんだか可愛らしいのだ。

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魅力4:ファンを刺激するアニメ文脈への眼差し

 アニメ初回は、浅草が初めてアニメの制作者を意識した日のことが描かれた。その際に登場したのが、かつてNHKで放映されていた『未来少年コナン』だ。(アニメの作中のタイトルは『残され島のコナン』となっている)。これは原作の第6話にあたるシーンで、それを読んで『コナン』を思い浮かべたからなのか、過去にファンがSNS上で「アニメ化するならNHKで」と盛り上がった。その書き込みを見たこともきっかけとなり、本作のプロデューサーが版元にアニメ化の打診をしたという。なんという幸せな邂逅!

 これ以外にも、作中には過去の名作を彷彿させるシーンが登場する。さらには、ライトボックス付きの机やセル画を撮影するためのカメラなど、数十年前から制作現場で使われている道具がありつつ、自動中割といった現代のツールも登場。制作現場の進化も俯瞰することができる。

 数多の魅力に満ちた本作。タイトルには「手を出すな!」とあるが、ここで手を出さない手はない。

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