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大ヒット中の『映像研』、オタクが抗えない4つの魅力

2020/02/09

 最近、アニメ好きの知り合いに送るメールに、「映像研みた?」という一文を入れている。もちろん、現在放映中のアニメ『映像研には手を出すな!』(NHK総合テレビ)を見る喜びを分かちあいたいからだ。

 原作は大童澄瞳による同名作(「月刊!スピリッツ」連載中)で、監督は、日本アカデミー賞最優秀アニメーション作品賞を受賞した『夜は短し歩けよ乙女』や『夜明け告げるルーのうた』の湯浅政明。初夏には乃木坂46の齋藤飛鳥・山下美月・梅澤美波による実写映画も公開される。この盛り上がりを体感するのは、今からでも遅くない。ではここで、原作とアニメの魅力をみていこう。

魅力1:物を作る喜びが、見ている側に伝染

 きっかけや環境がなければひとりで行動できないけれど、アニメ制作がしたい女子高生の浅草みどりと彼女の才能をいち早く見抜いたプロデューサー気質の金森さやか。2人は、ひょんなきっかけから同級生のカリスマ読者モデル・水崎ツバメがアニメーター志望だと知る。そこで、映像研究同好会を立ち上げた3人は、自分たちが考える「最強の世界」を実現すべく、アニメ制作にのめりこんでゆく。


「アニメは設定が命」と考える浅草のスケッチブックには、あらゆる設定がびっしり描きこまれている。建物や風景などの美術設定、有機的なデザインのメカ……。原作の設定画は見開きいっぱいに描かれており、空想の赴くままにペンを走らせたのであろう前のめり感が伝わってくる。

 一方の水崎ツバメは、キャラクターにリアルなアクションや細やかな日常芝居をつけたいタイプ。2人が西日と窓ガラスを利用して初めて合作するシーンをはじめ、全編に溢れているのは物を作る楽しさや喜びだ。それもあって“絵を描きたい欲”が刺激されるのか、現在開催中の「映像研による『最強の世界』展」(有楽町マルイ8F/2月11日まで)応援コメントの掲示コーナーには、来場者ひとりひとりがキャラクターを描いたふせんがびっしりと貼られていた。

魅力2:リアルと空想世界が滑らかに繋がる気持ちよさ

 3人が通うのは水上にせり出して建つ芝浜高校だ。度重なる増改築であらゆる様式が交じり合っており、創立前からあるという地下ピットはクリーチャーが飛び出てきそうなほど深い。別世界に繋がっていそう……想像力が掻き立てられると、彼女たちは自分たちが設定した空想世界に没入する。文字通り日常から解き放たれた3人は、メカを駆使し、画面いっぱい飛び回る。この滑らかなつながりが小気味いい。また、ひとたび不都合が起きれば、その世界にさっくり手を加えて有り様を変える。なにしろ、創造主は彼女たちなのだから。

映像研には手を出すな!(1)」(小学館)

 定期的に変化する映像研部室内の備品配置など、ディティールも楽しい。情報量がみっちり詰まった原作が、アニメのクリエイター陣のモチベーションに火をつけるのだろう。原作にはないつなぎのシーンに細やかな手芝居がついていたり、浅草の家の近所に特異な造形でお馴染みの小名木川クローバー橋(江東区)が登場するなど、ロケーション選びも遊び心に満ちている。