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不寛容社会を生きるために必要なこと

「おたがいさま」から遠く離れて

2017/07/13

世の中はどうとでもいちゃもんをつけられるように出来ています

 週刊誌で記事になるほど著名な人たちならずとも、私たちの社会は結構緊張しています。誰かに悪口をネットで書かれるかもしれない、あれを暴かれたら大変なことになる、当局に垂れ込まれてガサ入れでもあろうものなら我が社は倒産だ、様々な懸念やリスクと隣り合わせなのが現代社会だとするならば、むしろ言いがかりをつけられないようにひっそりと生きていくほうが賢いのだと思う人すら出てくるかもしれません。

 ただ、世の中はどうとでもいちゃもんをつけられるように出来ています。誰かが独身だと「いい歳して独り身なんて甲斐性がない」「人間性がまずいのではないか」と噂され、幸せな結婚をしたと思えば「あんなのとしか結ばれなかった駄目なやつ」「どうせ離婚するだろ」と叩かれたりするのが世間です。また、冒頭のようにちょっとした悪事が大きく取り上げられ、大した話でもないのにそこだけ切り取れば大悪人であるかのように喧伝されている現場を見ることもあれば、勝手な思い込みで膨らんだ虚像を信じ込んで自縄自縛になる人々もいます。

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痴漢冤罪保険なる謎なサービスが誕生した時代の空気

 テレビをつければ、事情を知らない有名人でも「さすがにこの人は精神的におかしくなっているので静かにしてやったほうがいいんじゃないか」と思うような夫婦喧嘩の事例が大々的にクローズアップされていたり、無名な人の思い詰めたうえでの事件事故があたかも世の中じゅうで起きている事柄であるかのように報じられてしまったりもします。まるで明日にでも変な人たちが世の中を転覆させるんじゃないかとすら思う勢いで、世の中が悪い方向に動いていっている、と思ってしまうぐらいです。

 一般的にも、セクハラやパワハラの類も、また電車の中での痴漢も痴漢冤罪も話が絶えません。先日、痴漢冤罪保険なる謎なサービスが誕生したと話題になっていましたが、そのぐらいリスクに敏感にならざるを得ない息苦しさみたいなものを感じます。まあ、確かに痴漢を疑われたら面倒この上ないことに巻き込まれることもあるでしょうしね。車を運転していてもドライブレコーダーは必須だと思うようなヒヤリ事例に沢山遭遇します。

 街中での歩きタバコも公共交通機関でのベビーカーの利用も、いままではある程度「おたがいさま」「まあ、このぐらいは」と許されていたものが議論の対象となり、他人に迷惑をかけずに街中でタバコを吸っていても死ねと言われ、ベビーカーを満員とは言えない電車に乗せても舌打ちされる不寛容な世の中をどうするべきなのか、考えてしまうわけです。

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