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 正規の学校教育課程より先に塾で学ぶ「先行学習」があまりに普及したことで、公教育の形骸化と崩壊が進み、また、子どもたちの発達段階とかけ離れた学習によって成長にも悪影響があると指摘されています。ソウルでもこの状況に制限をかけようと、2008年には市の教育庁が「深夜教習禁止条例」を制定して、市内の学習塾で22時以降の授業を禁止しました。

 ただ、22時以降は通学バスの中でテストを行うという塾もあれば、スマホアプリで24時間指導を行う塾も出ており、条例の実効性は低いままです。また、「体育施設」は条例適用外という抜け穴もあり、いまでは深夜時間を利用して水泳教室などに通う「スポーツレッスン」がブームになっています。

大学進学のために高額の進学塾に通う韓国の受験生たち ©AFLO

最近流行の「入試代理母」とは?

 どうしてスポーツ教室がブームになるのか、疑問に思われる方もいるかも知れません。実は韓国の高校入試では基本的にペーパーテストがなく、難関校でも内申書と面接だけで合否が決まります。体育や音楽などの副教科でも日ごろからよい点数をとることが求められているのです。

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試験当日、警察は白バイで受験生を試験場まで運ぶ「受験生緊急輸送作業」に全力を注ぐ ©AFLO

 その傾向は、大学入試でも同様です。一大イベントとして日本のセンター試験に相当する「修能試験」が行われ、リスニングの時間には韓国全域で飛行機の離着陸が禁止されて、受験生送迎のために白バイが待機するなどして話題になりますが、そのテストの点数だけで入学できる枠は30%ほど。多くの有名大学も含む残りの70%は、資格や内申点などの包括的な評価によって入学しています。

 もともとそうした総合評価は、勉強ばかりではなく、ボランティアや研究など様々な活動をする学生を評価しようと作られました。地方と都市では教育環境に差がありますから、そうした社会的な不平等を是正する意味もありました。ところが今では、富裕層の一部がゴーストライターを雇って自費出版して点数稼ぎを目指したり、大学教授が論文の共同執筆者に自分の子どもの名前を加えるようになったりしています。かえって、金やコネがものをいう状態です。