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両車の販売日は、わずか4日しか変わらない

 フィットとヤリスは、自動車業界ではBセグメントと呼ばれるクラスに相当する。車格や価格的にはほぼ同等、購入時は比較対象としてまず意識される、ガチもガチのライバルだ。それゆえか、今までこの2車種が発売時期を同じくすることはなかった。モデルチェンジ時期のずれは、お互いの利益を確保する暗黙協定でもあったのだろう。

 それが今回、フルモデルチェンジされた両車の販売日は、わずか4日しか変わらないという事態になってしまった。

 原因はフィットが用いる電動パーキングブレーキスイッチの歩留まりが当初予定にまったく届かず、納入する部品メーカーの変更を余儀なくされたからだ。それに対応するために、ブレーキシステムを高速域を多用する欧州仕様と同じ四輪ディスク化するなどユーザー側には美味しい仕様変更もあり、その検証や調達、適合の調整に約4ヶ月を費やした。結果、発売開始がほぼ正面衝突という事態になったわけだ。

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2020年2月14日に発売される新型フィット ©AFLO

 スタートラインが一緒ということで、いやが上にも注目を浴びるのは販売台数だろう。2002年に、それまで33年間連続で国内販売台数1位だったカローラを、その座から引きずり下ろしたのは他ならぬフィットである。当時のトヨタの怨念をいまだ引き継ぐ者がいるかは定かではないが、史実を知れば一矢報いたい気持ちにもなろうというものだ。

最近はきな臭さを感じることも少なくなった

 そういう意味では、ホンダの側にも怨念の火種はある。翌2003年、当時バカ売れしていたホンダのストリームというミニバンとさほど変わらぬサイズやコンセプトで被せてきたトヨタのWISHは、圧倒的販売力を背景にストリームの票田をがしがし刈り込んでいった。その後もインサイトvsプリウスなど、そういう事例は幾つかあり、ホンダとしてもトヨタには忸怩たる想いを抱いていたとしても不思議はない。

 少なくとも当時の両社のエンジニア陣はバッチバチに火花を散らし合っていたわけだが、最近はそういうきな臭さを感じることも少なくなった。ダイハツ、スバルにマツダにスズキと着々と“お友達”を増やしてきたトヨタにあっても、未だ独身を貫くホンダには噛みつかれんばかりの気概をもっていてもらった方が張り合いも出るだろう。そういう意味でも、この両車の販売合戦は久々に見ものだと思う。

2001年に発売された初代フィット(ホンダのホームページ「今まで販売したクルマ」より)

 ちなみに双方のプロトタイプに乗った印象でいえば、総合力は掛け値なしのイーブン。ただし、フィットがシンプルな内外装デザインや使い勝手の良さなど静的な特徴が際立つのに対して、ヤリスが走りの質感を劇的に高めたという動的な特徴を持つあたりは、なんだか昔とは真逆のような気もする。裏返せば今のトヨタは、かつてのホンダのように走りの良さにプライオリティが置かれるクルマ作りによっているということかもしれない。