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「コボちゃんを描いているときに食事はしない」 “4コマ漫画の巨匠”植田まさしロングインタビュー #1

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漫画家・植田まさし、70歳。読売新聞朝刊に連載中の「コボちゃん」が12519回(2017年7月15日現在)。「かりあげクン」はこの5月にコミックス60巻目を発売。そして「おとぼけ課長」は雑誌連載36年目にして初めての“昇進”、「おとぼけ部長代理」としてリニューアルスタートしたばかりだ。年間1100本の4コマを生み出し続ける巨匠は一体どんな人物なのか――。夕方4時、仕事場のある邸宅の一室に植田先生が姿を現した。

植田まさし先生

「コボちゃん」シフトの毎日 寝るのは午前3時半

―― お忙しいところ、ありがとうございます。

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植田 夕方の4時は仕事が一段落するんですよ。「コボちゃん」の原稿を取りに来るオートバイが毎日3時半に来るので。

―― 毎日「コボちゃん」を受け取りにバイク便が来るんですか?

植田 そうです。土日もです。まあ、新聞は年に10日ほど休刊日があるから、それ以外は毎日ですね。

―― 今日渡したものは、いつ頃掲載されるものなんですか?

植田 明日の朝刊ですよ。

―― えっ、明日載るものを前日に渡しているんですか!

植田 基本的にそうです。その日描いたものを、次の日載せてもらう。

―― とはいえ「コボちゃん」以外の連載もたくさん持っていますよね。毎日締切りとはすごい……。先生の一日はどんなスケジュールなんですか?

植田 一日の前半は「コボちゃん」に専念しています。朝は10時半ぐらいに起きて、そのまま仕事場に。で、仕上げ終わるのが14時とか14時半。それから、まぁ朝食というか、その日初めての食事をします。

―― 「コボちゃん」を描いている時に食事はしないんですか?

植田 食べないですね。それで15時半にバイク便に預けて新聞社に配達してもらう。それで、夜8時くらいに昼食じゃないけど2度目のご飯を食べて、夜中の1時ごろに夜食を食べる。もちろん一日の後半は「かりあげクン」とか「おとぼけ部長代理」とか、別の作品のネタを考えたり、描いたりしています。寝るのはいつも3時半。そして10時半に起きて「コボちゃん」に集中。毎日の締切りから逆算すると、10時半に起きるのがベストなんですよ。頭の回転とか。こうしてみるとメチャクチャな一日に思われるかもしれないけど、ちゃんと7時間寝てますし。

コボちゃん時計

読売新聞から「ストップ」がかかったネタ

―― このタイムスケジュールは昔からなんですか?

植田 新聞やり始めてからずっとです。「コボちゃん」が始まったのが82年の4月だから、35年くらい。新聞を中心に一日が回ってます。

―― 毎日締切りが来るプレッシャーは想像がつきませんが……。

植田 もうここまで来ると、「描かなきゃいけない」っていうプレッシャーはあまり感じませんね。それよりも新聞だから描いちゃいけないものとか、表現に気をつけなきゃならないところとか、その辺へのプレッシャーみたいなものはありますけど。

―― 「先生これはちょっと……」とダメになったこともあるんですか?

植田 ありますよ。いつだったか「こどもの日」用の回で、コボの親戚にあたるタケオさんが「こどもの日があるんなら、おとなの日もあっていいだろう」ってストリップ劇場に行くものを渡したら「ちょっとこれは良くない」って(笑)。結局OKになったんですけどね。「かりあげクン」や「フリテンくん」でできることが新聞だと難しいことはあります。今でもたまに引っかかることありますよ。

コボちゃんカレンダー

―― 今でもあるんですか?

植田 4コマが載るのは社会面ですよね。だから漫画の横には事件とか事故の記事が来やすいでしょう。そうなると、例えば「そこの角で自動車事故があった」みたいな場面を描いたものが、交通事故の記事と横並びで載っちゃうとまずいわけです。

―― しかし、予測不可能ですよね、どんな記事が隣に来るかなんて。

植田 なので、季節ごとに使える差し替え用の作品が何本かストックされているはずです。