蓮舫 民進党代表
「私は多様性の象徴だと思っている。その部分では、共生社会をつくりたいという民進党の理念には一点の曇りもない」
産経新聞 7月13日
民進党代表の蓮舫氏は11日に行われた党執行役員会で、自身が日本国籍と台湾籍の「二重国籍」だった問題について、「戸籍(謄本)を示し、近々説明する」と述べた(時事ドットコムニュース 7月11日)。
「都議選の大敗を受けて、何をすべきか。課題は沢山あるが、まずは、蓮舫代表の二重国籍問題を解決することだ」。民進党の今井雅人衆院議員がこうツイートしたのが7月8日のこと。今井氏は、「仲間である我々ですら分からないのだから、一般の人は尚更だ。遅きに失した感があるのは勿論だがやらないよりはよっぽどまし。自ら戸籍も見せて、ハッキリ説明することから始めなければいけないと思う」と続けた。
今井氏だけでなく、民進党党内からも蓮舫氏の二重国籍問題を都議選の敗因に挙げる声や、戸籍謄本の公開を求める声があったという(毎日新聞 7月14日)。それらの声に応える形での11日の発言だった。蓮舫氏の二重国籍問題は昨年9月の代表選の最中に浮上して以来、特にインターネットを中心に追及する声が多い。蓮舫氏のツイッターには「戸籍を公開せよ」という要求と人種差別的な発言が混在したツイートが毎日数百単位で寄せられている。ナショナリズムや多文化主義に詳しい関東学院大学非常勤講師の明戸隆浩氏は、二重国籍問題の根本的な部分に「差別」があると指摘している(BuzzFeed JAPAN 7月14日)。
蓮舫氏と民進党に対して批判も相次いだ。山口二郎法政大教授はツイッターで「政党の消長よりも、日本における基本的人権にかかわる重要な問題」と指摘し、「これは絶対に譲ってはならない一線だ。公的な活動、発言をするときに、自分は真正な日本人であることをいちいち挙証しなければならないなんて、全体主義国家だ」と書き込んだ(産経新聞 7月12日)。
朝日新聞は11日の蓮舫氏の発言を受けて、「民進党は大きな勘違いをしているのではないか」という社説を掲載した(7月13日)。「蓮舫氏が戸籍を公開すれば、党勢は上向く。そう本気で思っているのか」という言葉はその通りだと言うしかない。これだけ内閣支持率が下がっているのに民進党が浮上できないのは、議員たちのこうした的外れな考え方に原因があるとしか思えない。
「背水の陣ではない。すでに水に沈んでいる」
蓮舫氏は13日の定例会見で、「(戸籍に関する公表は)個人のプライバシーに属するもの。差別主義者に言われて公開することは絶対あってはならない」と表明し、自らは野党第一党の公人であるから「極めてレアケース」だと前置きした上で、戸籍そのものではないが「すでに台湾の籍を有していないことが分かる部分をお伝えする準備がある」と述べた(THE PAGE 7月13日)。多様性や共生社会の構築という民進党の党綱領に反するのではとの質問に対しては、「私は多様性の象徴だと思っている。共生社会を目指す方針に一点の曇りはない」と強調した。
昨年行われた日本テレビによる世論調査によると、蓮舫氏が台湾籍を持っていたことについて「そもそもいわゆる二重国籍自体を問題にすることはない」が31.7%、「日本国籍を持っており問題ない」が30.4%、「当初の発言と食い違っていたことが問題だ」が15.5%、「国会議員が二重国籍であることは問題」が14.6%という数字だった(日テレNEWS24 2016年9月18日)。そもそも蓮舫氏に「戸籍を公開せよ」と迫る人々に戸籍を公開したところで、民進党の支持者に転じるわけがない。
今年の民進党の仕事始めで野田佳彦幹事長は「背水の陣ではない。すでに水中に沈んでいる」と挨拶したというが(産経新聞 1月4日)、民進党はそこからまったく浮上していない。蓮舫氏は「多様性の象徴」と自任するなら、そのような政策やビジョンをもっと発信すべきなんじゃないだろうか。