前川喜平 前文科省事務次官
「条件が付されることで、加計学園が残る。規制緩和の恩恵を加計学園だけが受ける。初めから加計学園に決まっていた、加計学園に決まるようにプロセスを進めてきたと見える」
BuzzFeed NEWS 7月11日
名言、珍言、問題発言で1週間を振り返る。7月10日、衆参両院で学校法人「加計学園」の獣医学部新設に関する問題をめぐる閉会中審査が開催された。しかし、安倍晋三首相不在で行われた質疑は平行線をたどったままだった。
獣医学部新設の決定について、前川氏は「和泉(洋人)総理大臣補佐官から直接の働きかけがあり、和泉補佐官を中心として、総理大臣官邸の関与があることは明らかに推測される。また、京都産業大学の提案との比較、検討がきちんと行われたのかどうかも明らかでなく、不明朗なところが多い」と指摘。その上で「私が『ゆがめられた』と思う部分は、規制緩和の結果として、『加計学園』だけに獣医学部の新設が認められたプロセスであり、不公平・不透明な部分があるのではないか」と述べた(NHK NEWS WEB 7月10日)。
萩生田官房副長官「記憶にない」山本地方創生大臣「一点の曇りもない」
規制緩和そのものは問題ではなく、安倍首相の“腹心の友”が理事長を務める加計学園だけに獣医学部新設が認められたプロセスが問題だということに変わりはない。「官邸の最高レベル」「総理のご意向」文書には、首相官邸周辺の人物が便宜を図った経緯が記されていた。また、NHKがスクープした「官邸は絶対やると言っている」と萩生田光一官房副長官が文科省に通告した文書もある。しかし、閉会中審査で、萩生田氏は発言について「記憶にない」と繰り返した。山本幸三地方創生大臣は「一点の曇りもなく、ルールに基づいてやってきた」とプロセスに問題はないと主張している。いずれもこれまで行われてきたやり取りの通りである。その後は前川氏の言動に対する与党からの質問が繰り返され、議論が深まることはなかった。
フジテレビシニアコメンテーターの鈴木款氏は「きょうの閉会中審査が終わっても、国民の疑念は膨らむ一方だ」と断じている(ホウドウキョク 7月10日)。多くの人が同じように感じているだろう。
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加戸守行 前愛媛県知事
「岩盤(規制)にドリルで、国家戦略特区が穴を開けていただいたということで、『ゆがめられた行政が正された』というのが正しい」
FNNニュース 7月11日
閉会中審査に与党側が招致したのが、愛媛県今治市への獣医学部誘致を進めた加戸守行前愛媛県知事だ。旧文部省OBで愛媛県知事を1999年から2010年まで3期12年務めた加戸氏の発言は、主にインターネットを中心に反響を集めた。
鳥インフルエンザや口蹄疫の四国への上陸阻止やBSE(牛海綿状脳症)の日本への波及阻止などに苦労していたという知事時代、獣医学部の誘致に取り組んだが文科省への申請は10年間、一向に通らなかったという。
「愛媛県にとっては、12年間『加計ありき』でまいりました」
「行政がゆがめられたという発言は、私にいわせると少なくとも獣医学部の問題で強烈な岩盤規制のために10年間、我慢させられてきた岩盤にドリルで国家戦略特区が穴を開けていただいたということで、ゆがめられた行政が正されたというのが正しい発言ではないのかなと思う」(産経ニュース 7月11日)
「『加計ありき』、『加計ありき』と言いますけど、12年前から声をかけてくれたのは、加計学園だけであります。愛媛県にとっては、12年間、『加計ありき』でまいりました」(FNNニュース 7月11日)
しかし、加戸氏が愛媛県に獣医学部の大学を誘致したかったという思いと、今回の政策プロセスの「不公平・不透明な部分」はまったく関係がない。「こんなかたちで獣医学部がおもちゃになっていることを残念に思う」という加戸氏の気持ちに応えるためには、やっぱりあの人に登場してもらうしかない。