いまから16年前のきょう、2001(平成13)年7月20日、スタジオジブリ制作・宮崎駿監督のアニメーション映画『千と千尋の神隠し』が封切られ、たちまち大ヒットとなった。宮崎の前作『もののけ姫』(1997年7月12日公開)は約1年をかけて邦画の興行成績の新記録(興行収入193億円、観客動員数1420万人)を達成したが、『千と千尋』はそれをわずか56日で突破。さらには11月11日までの約4ヵ月間で、『タイタニック』(ジェームズ・キャメロン監督、1997年公開)の興行成績をも抜き、日本映画史上トップに躍り出る。結局、『千と千尋』は1年以上のロングランヒットとなり、最終的に興行収入は304億円、観客動員は2350万人に達した。
『千と千尋の神隠し』大ヒットの背景のひとつには、シネマコンプレックス(シネコン)の全国的な普及もあげられる。『千と千尋』は公開されるや、シネコンの複数のスクリーンで上映された。そこへさらに客が殺到したため、ほかの映画をかける予定だったスクリーンも同作のために回され、上映面数がどんどん増えていく。このため観客動員は加速度的に増加したのだ。しかし、この結果には功罪両方の側面があったと、スタジオジブリのプロデューサーの鈴木敏夫は次のように語っている。
「『千と千尋』がスクリーンを寡占したことによって、他に当たりそうだった映画が軒並み割りを食ってしまったのです。その事態を重く見た日本の映画興行界では、以降『千と千尋』のようなメガヒットを出すまいという空気が支配的になっていきます」(スタジオジブリ・文春文庫編『ジブリの教科書12 千と千尋の神隠し』文春ジブリ文庫)
『千と千尋』では、八百万の神々の通う湯屋を舞台に、そこに迷いこんだ10歳の少女・千尋が名前を奪われ、「千」として働く姿が描かれた。モチーフはきわめて日本的であったが、ベルリン国際映画祭の金熊賞や米アカデミー賞の長編アニメーション賞を受賞するなど、国際的にも高く評価される。なお、監督の宮崎駿は『風立ちぬ』の公開後の2013年、いったんは引退を宣言したが、今年2月、新たな長編アニメの準備に入ったと報じられた。