「あー、面白かった」では終わらないコンテンツ
――なるほど。国のサポートと映画の評価は、全く別の問題だということですね。
李 そうですね。逆に国が莫大なお金を支援しても、興行的には大失敗した映画もたくさんあります。だから、ここは直接的な因果関係で語ることはできないと思うんです。
――では、韓国映画がここまで世界的な評価を得るようになったのは、何がきっかけなのでしょうか?
李 BTS(防弾少年団)などのK-POPでも同じことが言えるのですが、「グローバルなトレンドを読める人」が、業界の主流になってきたことが大きいと思います。映画で言えば、いま世界的に注目が集まっているのはどんなタイプの作品なのかを見極める。そしてそのジャンルの中で、自分が伝えたいメッセージを、独立系の映画ではなく、あくまでメインストリームに留まりながら、エンターテインメントとして発信しようとする。そんな監督がたくさん出てきました。
彼らが作る映画は、単純に「あー、面白かった」というものではありません。今回の『パラサイト』では、「あの“半地下”は何を象徴していたんだろう?」といったように、観た後に思わず誰かと語りたくなりますよね。
『パラサイト』が描いた貧困は“韓国特有の問題”ではない
――「観たら終わり」の映画ではなく、むしろ「観てから始まるものがある」と。
李 彼らはそのようなコミュニケーションが生まれるように、意図的に映画を作っているんです。今回、ポン・ジュノは“貧困”を描いていますよね。でもこの問題は韓国特有のものではなく、グローバルな問題です。アメリカでも、ヨーロッパでも、日本でも、身近な問題として受け止められる。
それと同時に、映画が発するメッセージは一方的なものではなく、多様な解釈ができるようになっている。だから、観た後にディベートが生まれるんです。他の映画と比べたときに、一番の違いはそこにあるのではないかと思います。
――なぜ韓国には、そうした“グローバルなトレンド”を読める人材がたくさんいるのでしょうか?