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70年代まで“文化の輸入”が制限されていた韓国

 2つの要素があると思います。ひとつは韓国という国が歴史上、「複雑な国際関係の中での自国の立ち位置」を意識しつづけて、生きてきた国であるということ。もうひとつは、韓国には世界への興味を無理やり遮断された時期があったということです。

 70年代末まで続いた軍事独裁政権下では、一般的な韓国人が簡単に国外旅行をすることはできず、国外の文化を輸入したりすることも制限されていました。でも、80年代に民主化が進むと、その反動で一気に世界への関心が花開いた。だから、「自分たちはグローバルな世界に住んでいる」という感覚は、韓国では映画監督に限らず、皆が普通に持っているものなんです。

2012年のヴェネツィア国際映画祭では、キム・ギドク監督の『嘆きのピエタ』が金獅子賞を受賞した ©getty

――そして80年代以降、韓国の映画文化も急速に成熟してきたと。

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 そうですね。その間、「ブラックリスト」に象徴されるように、国が文化を締め付けようとした時期もありました。でも、制作者側はそんなことには左右されなかった。一方、国からの“支援“で言いますと、さきほど申し上げたとおり、制作費の補助といったような“直接的なサポート”には、そこまで効果はなかったと思います。ただ、広く映画文化を支えようとする“間接的なサポート”には、かなり効果があったのではないでしょうか。

――それは具体的にどういったものでしょうか?

映画文化を盛り上げる“土壌”を作る

 たとえば韓国の文化庁に当たる文化体育観光部には、韓国映像資料院という機関があります。ここがYouTubeのチャンネルを持っているんですが、ぜひ見てみてください(https://www.youtube.com/user/KoreanFilm/featured)。映像資料院が著作権所有者に連絡をとり、権利関係をクリアして、過去の韓国映画を全編無料で観られるようにしているんです。

――これはすごいですね!

韓国映像資料院のYoutubeチャンネル。韓国映画のアーカイブが無料で観られる

 大学の授業で映画を扱いたいときは、事前にYouTubeのリンクを学生に送っておけば簡単に観られます。チャンネルが開設したのは2011年ですが、これができてから韓国映画を学ぶ学生は増えています。映画好きの若者にとっても、最高のページですよね。

――映画業界を盛り上げる“土壌”が、こうした取り組みで作られているのですね。

 やはり、国は制作者とは少し距離を置きながら、彼らにとって良い環境を作ることにこそ、お金をかけるべきじゃないかと思います。一見遠回りに思えるかもしれませんが、こうした支援が韓国映画のレベルを底上げしているのは間違いないと思います。