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【巨人】高橋由伸が地上波中継時代最後のスターならば、小林誠司はSNS時代のみんなで共有するスターである

文春野球コラム ペナントレース2017

SNS時代のプロ野球選手に求められる「共感」と「共有」

 思えば、毎試合地上波中継されていた頃の巨人は正統派のテレビ映えするスターが多かった。現監督の高橋由伸はまさにその系譜だ。90年代の終わりから00年代中盤まで、ゴールデンタイムのど真ん中で主役を張り続けた背番号24。年間百数十試合、視聴率20%近く稼ぐ番組に毎晩出続けるアスリートなんて今はもう誰もいない。ついでに言えばペプシのCMに出演する巨人選手も今後しばらく現れないだろう。まさに泣く子も黙る「地上波中継時代最後のスーパースター高橋由伸」だ。

 なら今は? 巨人戦の視聴方法もこの10年で大きく変わり、BSやCS放送、さらに動画配信サービスと選択肢多数。同時にファンの好みも細分化した。最近ではテレビ局の強引とも思える日本ハムの大谷翔平推しに対する野球ファンの反応を見ていると、テレビカメラがひとりの選手を追い続ける伝統のスターシステムは限界を迎えつつあるように思う(もちろん大谷本人には何の非もない)。その根底にあるのは野球ファンの、メディアから楽しみ方を一方的に押し付けられるのはもうゴメン。俺らもう勝手に楽しみますからという観戦スタンスではないだろうか。

 そんな現代のプロ野球選手に重要なのは、実力はもちろん、SNSとの親和性である。超人的な一流プレイヤーがふとインスタ上で見せる普通のお兄ちゃんの顔。Twitterで飛び交う選手同士の他愛のないやり取り。オールスターで投げ合った菅野智之や則本昂大にしても、実力的には日本を代表する素晴らしい投手なのは確かだが、江川卓や村田兆治といった昭和のド迫力の大エースたちと比べるとキャラ的に怪物感は薄く親しみやすさすら感じさせる。

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 いまや多くのプロ野球ファンは別世界のスーパースターではなく、自分と同じ世界にいる親しみやすい選手を応援する。そこで求められるのはアイドル論にも近い「隙のない完璧さ」よりも「突っ込みどころのある不完全さ」だ。例えば、小林誠司の似合いすぎのサラサラヘアではなく、愛嬌のあるイケメン坊主頭のように。ドラ1のエリート野球人生と思いきや、見た目も成績も突っ込みどころ満載。けど、WBCやオールスターの大舞台で時にとんでもない大仕事をしてみせる。さあ次はなにをやってくれるのか? 後半戦もファンはそんな期待を抱いて背番号22に注目するだろう。

 その坊主頭に共感して、意外性の活躍をどこかの誰かと手の中のスマホで共有する。2017年、いわゆるひとつのシェアハウス的な、シェアコバちゃん現象。

 いわば小林誠司とはSNS時代が生み出したみんなで共有できるスター選手なのである。

 See you baseball freak……

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※「文春野球コラム ペナントレース2017」実施中。この企画は、12人の執筆者がひいきの球団を担当し、野球コラムで戦うペナントレースです。コラムがおもしろいと思ったらオリジナルサイトhttp://bunshun.jp/articles/3397でHITボタンを押してください。

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