日本中が騒然となった昨年末のカルロス・ゴーン氏(元日産自動車会長)の海外逃亡。ゴーン元会長事件のもう1人の逮捕者、グレッグ・ケリー氏(同社元代表取締役)は、元上司の逃亡をどう受け止めていたのか。
一報を聞いたのは、12月31日未明だったという。
「私は、寝ていたところを、突然、アメリカにいる息子からの電話で叩き起こされました。『ニュースを見た?』と尋ねてきたのです。最初は何を言っているのかわからなかったのですが、パソコンを開いてみると仰天しました」
米国に帰りたくても帰れない
「私はびっくりしました。『え、いつ? どうやって?』という世界中の人々と同じ疑問を持ったのです」
ケリー氏とゴーン氏、そして法人としての日産の刑事責任を問う裁判は、共に進められることが決まっていた。ところが2018年11月の逮捕から1年以上たっても、公判で取り上げるべき争点や証拠を絞り込む公判前手続きに手間取り、裁判の日取りさえ決まっていない状態だった。
ケリー氏は保釈中で、都内に暮らす。故郷の米国には、帰りたくても帰れない身だ。そんな状況のなかで起きたのが、ゴーン氏のレバノンへの逃亡だったのだ。
「逃亡」の一報を受けて、ケリー氏の脳裏に浮かんだのは、自らの裁判へ深刻な影響を及ぼすのではないかという懸念だった。