それは素晴らしい光景だった
スタンドの興奮冷めやらぬ中で迎えた試合後。ベンチにいた鈴木大地と私は少しばかり緊張していた。本当にみんな嫌がらずにやってくれるのだろうか? 盛り上がるのだろうか? やるからには失敗は許されない。「試合より緊張するかも……」。拡声器を持ち、ファンに呼びかける役を任された鈴木大地は声を震わせた。
すべてのセレモニーが終わるとホークス松田選手の大きな声が響き渡った。「いくぞ! パ・リーグ!」。当初は各球団それぞれ1選手でも出てくれれば、十分と思っていた私だったが松田選手の掛け声で、全員が走っていく姿に圧倒された。その光景は夢を見ているようだった。みんな笑顔で、楽しそうにライトゾーンに集結した。そしてマリーンズのキャプテン・鈴木大地の音頭で声をだした。「WE ARE」と3回。そして「パ・リーグ」と続いた。パ・リーグのスター選手がみんなで肩を組み、笑顔で声を張り上げた。シーズン中は真剣勝負を繰り広げる球界を代表する大物たちがファンと一体となっていた。ライトスタンド、1階内野席、2階内野席、セ・リーグファンが陣取るレフトや三塁側内野席でも飛び跳ねていた。球場中が、なにか見えない神聖なものに包まれているような錯覚に陥るほど、それは素晴らしい光景だった。
あれから月日が経った。リーグ戦は再開され、再び魂をぶつけあう闘いの日々に戻った。あの光景が嘘のようにすら感じる。だが、現実だ。今も忘れない。ファイターズ、ホークス、ライオンズ、イーグルス、バファローズの選手たちの「『WE ARE』やろう! いこう、いこう!」と賛同してくれたあの声と爽やかな笑顔を。パ・リーグの選手たちの底知れぬ魅力とプロ野球の素晴らしさを再認識させられた瞬間だった。
最後に、ご協力いただいた各球団選手の皆様、本当にありがとうございました(特に引っ張ってくれた内川選手、松田選手)。それは一瞬の事だったかもしれないけれど、本当に本当に素晴らしい瞬間であり、ファンにとって最高のプレゼントとなりました。あの日、あの時の皆様の野球ファンへの想いはいつまでも語り継がれていくと思います。
梶原紀章(千葉ロッテマリーンズ広報)
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