メンタル? 技術? 性格? 今の藤浪にもっとも必要なもの
現在、藤浪の不振、とりわけ深刻な制球難の要因については、多くの野球評論家や野球記者たちの間でさまざまな説が飛び交っている。ある人はイップス説を主張し、またある人はイップスほどではないもののメンタル問題を指摘し、またある人は頑固で聞く耳をもたないとされる彼の性格面などに言及する。その一方で、藤浪本人は「メンタルどうこうより、フォーム的におかしくなったところを、自分で直せないことが第一」(デイリースポーツ7月7日付)と技術面を口にしている。これは阪神の宿命みたいなものかもしれないが、実に多くの人やメディアが彼の不振について独自の見解を発信しているわけだ。
もちろん、真相がどれなのかはわからない。もしかしたら、本人も正確には把握できていないのかもしれない。先述したいくつもの要因が絡みあった複合的な問題という見方もできるわけだから、一概にこれだとは言い切れないだろう。
そう考えると、今の藤浪にもっとも必要なものは、そういう複雑な問題とゆっくり向き合える“時間”ではないか。メンタル面や技術面、性格面など、各所から多様な意見が出ているなら、それらを整理し、取捨選択しながら試行錯誤できる時間が不可欠だ。
だからこそ、余計に藤浪の早期復帰を求める論調には一抹の危惧を感じてしまう。もちろん阪神の逆転優勝のためにはそれが望ましいのかもしれないが、そのために各要素を突貫工事するような焦りは怖い。せっかく首脳陣は無期限二軍調整という名目を藤浪に与えたのだから、今はその無期限という言葉を額面通り受け止めたい。
早期じゃなくていい、今季中の復帰が無理でもいい、阪神が優勝しなくてもいい。たとえば来季の藤浪が生まれ変わった姿を見せてくれるなら、それがなによりうれしい。今季どうこうではなく、藤浪が何年も虎の大エースに君臨し続ける未来を夢見ている。
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