1日で約500球 ブルペン捕手の役割
プロ野球ではキャンプでは1日500球ほど投手のボールを受ける。シーズン中は練習中に先発を控えた先発投手のボールを40球ほど。試合前にその日の先発のボールを最初の10球を受けて、マスクを被る捕手に代わる。試合中はブルペンで3人ほどの投手を一人あたり20球ほど。その中で意識をしていることは「投手に気持ちよく投げてもらうこと」だ。ボールの状態が悪くても決してマイナスな事は伝えない。逆にナイスボールが来たら、捕球後、数秒はミットを微動だにさせずに余韻に浸らせる。投手から「ちょっと、良くないですよね」とマイナスな発言が飛び出しても「ちょっとね。でも前回、抑えた時もブルペンではこんな感じだった。だから大丈夫」というように励まし、肯定的な材料を提供する。捕球音もパーンと音が出ることを意識することで投手が乗ってくることも多々ある。とにかく気持ちよく投げてもらうことに徹する。
「オレが大学時代はちょうど伊東監督がライオンズの正捕手で憧れだった。日本シリーズとかを見ているとボールを包み込むようなイメージだった。投手を気持ちよく投げさせる捕手という感じ。自分もずっとそのイメージを大事にしている」
笑福亭鶴瓶のような優しい表情に投手陣も安心感を感じるのだろう。今日もいつものようにミットを手にブルペンに向かう。中3の時にボーイズリーグ日本代表としてメキシコで行われた世界大会で世界一を経験した。高校でも日本代表で甲子園に4回出場し3年夏には本大会で3本塁打。専修大学では男・黒田の1つ先輩で小林幹英氏と同級生。そして社会人では6年連続で都市対抗に出場(日本生命の補強で4回。大阪ガスの補強で1回。自チームで1回)。イチロー(マーリンズ)と同じ年の黄金世代だ。そんな華やかな経歴を入団後、一切語ったことはない。だから、私はここで紹介をしようと思った。甲子園の季節。プロを夢見る若者たちに、プロという世界で選手以外の道を究めようとする男がいることを教えたかった。そしてなによりもマリーンズを陰ながら支える男の存在をファンの方に知って欲しかった。
梶原紀章(千葉ロッテマリーンズ広報)
◆ ◆ ◆
※「文春野球コラム ペナントレース2017」実施中。この企画は、12人の執筆者がひいきの球団を担当し、野球コラムで戦うペナントレースです。コラムがおもしろいと思ったらオリジナルサイトhttp://bunshun.jp/articles/3544でHITボタンを押してください。