地裁が「被告人が誤信した」と認めた5つの根拠
地裁が認定した生の具体的事実は、
A 第三者が、「被害者が被告人のことが良いと言っているよ」と言って、被告人をソファフロアに連れて行ったこと
B このサークルのイベントでは本件性交以外にもわいせつな行為がしばしば行われていたこと
C 被告人も本件サークルのイベントではないが、本件以前、本件飲食店で他の女性と性交したことがあったこと
D 被告人が、本件飲み会では、女性に対して安易に性的な行動に及ぶことができると思っていたこと
E 被害者から被告人に対して明確な拒絶の意思は示されていなかったこと
という5点であった。
地裁の事実認定への4つの疑問
現在、日本の裁判所は、準強姦罪は、個人の性的自由を守るために犯罪とされていると考えている。性的自由とは「誰と、いつ、どのように性的関係を持つかの自由」を意味する。性交の承諾は、性交の相手方自身から、性交自体についてされなければ意味がない。
たとえ、「A 第三者が、『被害者が被告人のことが良いと言っているよ』」と言っていたとしても、単に好感を持っただけかもしれない。通常の大人なら、本人の意思を確認するだろう。
また、たとえ「B このサークルのイベントでは本件性交以外にもわいせつな行為がしばしば行われていた」「C 本件以前、本件飲食店で他の女性と性交したことがあった」としても、被害者自身が性交の承諾をしたと、勘違いするのは非常識だ。性交の相手ごとに、個別に承諾を確認するのが常識である。
しかも、準強姦罪は、「抗拒不能」が要件なのだから、「E 被害者から被告人に対して明確な拒絶の意思は示されていなかったこと」を以て故意を否定するのであれば、それは準強姦罪を死文化させるものであり、準強姦罪の否定である。
地裁は、BとCを基に、「D 被告人が、本件飲み会では、女性に対して安易に性的な行動に及ぶことができると思っていたこと」を認めた。しかし、過去にほかの女性と性的な行為に及ぶことができたからといって、全く別の女性が飲酒酩酊しているのをみて、性交の承諾ありと考えることは、認知の歪みであろう。裁判所が、それを理由に、準強姦罪の故意を否定するのであれば、被告人の認知の歪みを、裁判所が追認するものであり、不当である。