東京都足立区の病院で2016年、手術直後の女性患者・A子さんの胸を舐めたなどとして男性医師(43)が準強制わいせつ罪に問われた事件で、12人の弁護士による被害者支援弁護団が3月15日に結成された。男性医師には東京地裁で無罪判決が出たが、検察はこれを不服として控訴していた。

東京地方裁判所 ©文藝春秋

鑑定資料はいまも科捜研にあります

 A子さんの代理人を務める上谷さくら弁護士は、東京地裁内の司法記者クラブで会見を開き、「あまりに雑な判決だったこと、そして被害者バッシングがひどいことから、弁護団が結成されました。私も国選弁護人ですし、みなさん無償です。被害者からも『より多くの弁護士に支援してもらえるのであれば、ありがたい』と言われています」と述べた。

司法記者クラブにて行われた記者会見。左から順に川上賢正弁護士、高橋正人弁護士、上谷さくら弁護士、山田廣弁護士 ©文藝春秋

 無罪判決のポイントの一つとして、被告のDNA鑑定に使用された抽出液の残りが廃棄された件が問題視され、判決文において「非難されるべき行為」とされている。この点について弁護団の一員で、医療訴訟なども数多く手がける高橋正人弁護士が語った。

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「鑑定資料を全量廃棄した、つまり再鑑定ができないかのように判決文に書かれていますが、それは間違いです。鑑定資料はいまも科捜研(警視庁科学捜査研究所)にあります。再鑑定も可能です。ただし、(一審では)被告側は再鑑定を求めていません」

 警視庁刑事局長発(平成22年10月21日付)の「DNA型鑑定の運用に関する指針の改正について(通達)」によれば、「当該資料の残余又は鑑定後に生じた試料の残余は再鑑定に配慮し、保存すること」とある。本件において、この通達は守られていたのだろうか。

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