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再生医療は2020年の実用化を目標に

──佐藤先生のお話だと、20代ぐらいで薄毛になると、本当に将来に大きく影響するわけですよね。薬だけでなく、こうした再生医療が実現すると、薄毛の人には本当に希望になると思います。いつごろ実現しそうですか?

佐藤 自分の細胞を培養して移植する方法は、3年後の2020年のオリンピックイヤーを目標に実用化の研究を進めています。ただし、高額になりそうなので、60代、70代の大金持ちの人で、「ナンボでもカネ出すから、死ぬ前に一度はフサフサになってみたい」という人が最初の対象になるでしょうね。若い人は、やっぱり薬なんですよ。そもそもフィナステリドは、まだ髪の毛が残っている若いうちに始めたほうがいいので。

──もし薄毛が気になるなら、早めに治療を始めたほうがいいということですね。薄毛に悩む若い男性もたくさん読んでくれると思うので、最後にアドバイスをお願いします。

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佐藤 薄毛になるかどうかは、ある程度遺伝で決まります。父親が薄毛か、あるいは父方、母方どちらかのおじいさんで薄毛の人が1人でもいたら、半分くらいの確率で薄毛になるでしょう。ですから、そうした遺伝的要素があれば、気をつけたほうがいいと思います。また、脱毛には季節性があって、夏場から秋にかけては結構抜けてしまいます。それが一過性のものであればいいのですが、冬になっても抜け毛が続く場合にはやはり進行する可能性があるので、男性型脱毛症(AGA)を疑ってください。それで気になるようだったら早めに治療した方がいいので、AGAの治療をしているクリニックを受診してください。費用の目安としては、月4000円から8000円くらいまでなら適正です。AGAには2010年から「診療ガイドライン」があり、今年改定される予定になっています。インターネットで無料で読めるので、それを参考に、ぜひ根拠のある治療を受けてください。

*日本皮膚科学会【男性型脱毛症診療ガイドライン(2010年版)

 

──薄毛治療のことがよくわかりました。薄毛でコンプレックスを持たずにすむ世の中になればいいですね。丁寧なお話、ありがとうございました。

佐藤医師の大切な仕事道具である櫛は「100均で買ったよ」 ©佐藤亘/文藝春秋

佐藤明男(さとう・あきお)
1957年新潟県生まれ。北里大学医学部卒業。98年、英国オックスフォード大学に留学後、フィナステリドによる薄毛治療を国内でいち早く開始する。これまでに7000人を超えるAGA患者を治療。北里大学医学部寄附講座再生医療形成外科学特任教授なども兼任し、毛髪の再生医療研究にも取り組んでいる。『なぜグリーン車にはハゲが多いのか』(幻冬舎新書)など著書多数。東京メモアリアルクリニック・平山院長。http://www.clinic-hirayama.com/