1ページ目から読む
2/2ページ目

選手育成のドラマとはゆるやかに流れる大河

 とにかく、中谷は15年にプロ初安打を記録し、16年に初本塁打を記録、そして今季は初の二桁本塁打と、少しずつではあるものの、近年の若虎には珍しく成長の折れ線グラフを順調に上昇させている。その上昇角度が本当に少しずつだから、マスコミから大きく取り上げられることはなかったのだろう。もしかしたら、結果的にこれが良かったのかもしれない。目立ちすぎることなく、騒がれすぎることなく、だけど着実に成長している。

 思えば2月のキャンプを訪れた際、中谷は通常の外野練習に加え、少しでも出場機会を増やしたいという思いからか、ファーストの練習にも懸命に励んでいた。高山や原口、北條といったところが期待の若虎の第1グループだとすると、キャンプでの中谷は彼らほど多くのマスコミに囲まれていたわけではなく、第2グループという印象だった。

 しかし、そんな中谷が第1グループより成績を上昇させているのだから、現実はおもしろい。本来、選手育成のドラマとはゆるやかに流れる大河みたいなもので、一気の大ブレイクに期待するほうがまちがっているのだろう。中谷は少しずつでいい。少しずつでいいから、今季は昨季よりも、来季は今季よりも、成長の折れ線グラフを上昇させてほしい。

ADVERTISEMENT

 そんなことを思いながら、私は中谷のプレーを楽しみに眺めている。オフになって騒がれすぎやしないかと、一抹の不安も感じながら。

◆ ◆ ◆

※「文春野球コラム ペナントレース2017」実施中。この企画は、12人の執筆者がひいきの球団を担当し、野球コラムで戦うペナントレースです。コラムがおもしろいと思ったらオリジナルサイトhttp://bunshun.jp/articles/3620でHITボタンを押してください。