<しかし最終的に結論付けるのは吾人であることを考えれば、ミクロの部分での争いが戦いを決する重大な要素になろう。野球で言うところの球ぎわの強さが現代の棋士に要求されているわけである。>(同)
勉強に将棋AIを全く使わない棋士でも、周りは将棋AIの考えを元に対局を重ねており、それを目にして勉強に取り入れれば、結果的に将棋AIの考えを取り入れることになる。その波は時を経て幾重にもなり、将棋AIの考えはもはや棋士全体へ浸透した。
じつは本田五段は「ぶつかり稽古」で強くなった
そうなると、プロ同士で将棋AIの考えを元にして差をつけることは難しく、「ミクロの部分での争い」が大切だ。
本田五段は将棋AIとの関連ばかりが取り上げられるが、本質的には「ぶつかり稽古」で強くなったと語っている。そういう意味で、いまのトップ棋士では永瀬拓矢二冠と近いところもある。新しい技術と旧来の修行法をうまくミックスさせて、「球ぎわの強さ」も磨いているのだ。
相掛かりは先手番でしか出来ない戦法で、しかも相手の同意が必要となる。
渡辺三冠は作戦家として知られ、いかに相手に力を出させず自身の強みを活かす形に持ち込むか、それを得意としている。第3局以降、渡辺三冠は作戦面でさらに揺さぶってくるだろう。そして渡辺三冠の「球ぎわの強さ」はプロ間でも群を抜いている。
本田五段は揺さぶりについていき、「球ぎわの強さ」で立ち向かえるか。注目の棋王戦五番勝負第3局は3月1日(日)に行われる。
将棋YouTuberとの決戦へ
さらに本田五段は棋士編入試験第4局で試験官を務める。プロ入りを目指す将棋YouTuber折田翔吾アマはここまで2勝1敗できており、本田五段に勝てばプロ入りが決まる。
折田アマにとって人生をかけた大一番だ。
折田アマも相掛かりを得意としており、この武器でここまでプロ棋士をなぎ倒してきた。おそらく互いに得意とする相掛かりのぶつかり合いになるであろう。
そしてお互い、序盤の構想力と中盤の瞬発力を「棋風」としている。互いの「棋風」がぶつかりあったとき、その価値観の優劣で勝負が決まる。
折田アマは、本田五段を上回る価値観を示せたとき、プロへの扉が開かれる。この一戦は2月25日(火)に行われる。世間の耳目を集める戦いになるだろう。ご注目いただきたい。