「図らずもニュースとして大きく報じられたことで、宮内庁内部でも『これこそが二重権威の象徴だと批判されてしまうのではないか』と疑問の声が上がったのです」

 こう声を潜めるのは、ある宮内庁関係者だ。

天皇皇后両陛下と長女愛子さま、上皇ご夫妻、秋篠宮ご一家(2019年12月12日撮影)宮内庁提供

天皇陛下はあくまでも挨拶を受けられるお立場

 天皇陛下が還暦を迎えられた2月23日の誕生日当日、テレビやインターネットでは「天皇・皇后両陛下は23日夕方、上皇ご夫妻のお住まいを訪ね、誕生日の挨拶をされる予定だったが、上皇さまに少し風邪の症状がみられることから、大事を取り、見送られた」と一斉に報じた。

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上皇陛下 ©共同通信社

「皇太子時代の天皇陛下が、事あるごとに上皇陛下のもとをご挨拶に訪れる“千代田詣で”は、当たり前のことだったので、一切疑問は持っていなかったのですが、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴のお立場となられた天皇陛下が、自ら上皇陛下のもとに足を運ばれるというのは、国民の目にはどう映るのかということを、今回『ご挨拶中止』が報じられたことで改めて考えさせられたのです。

2020年、天皇陛下お誕生日に際してのご近影 宮内庁提供

 もちろん社会通念上、息子が親のもとを挨拶に伺うというのは当然という考え方もあります。ましてや上皇・上皇后両陛下はご高齢で、ともに80歳を超えられているという事情もあります。しかし、憲法の規定上、日本で唯一無二の存在であるのが天皇です。二重権威の懸念がささやかれ続けている昨今の状況を勘案すれば、天皇陛下はあくまでも挨拶を受けられるお立場に徹するべきなのではなかろうかという声が、宮内庁周辺でも出始めているのです」(前出・宮内庁関係者)