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上皇職には「平成流こそ皇室のあるべき姿」と考える人が……

 上皇陛下の側近ナンバー1である上皇侍従長の河相周夫氏は、外務省では駐米大使に次ぐ地位に当たる事務次官を経験しており、天皇陛下の側近ナンバー1である侍従長の小田野展丈氏よりも、元外務官僚としては“格上”だ。もちろん、ともに侍従長と東宮大夫からのスライドという事情はあるにしても、二重権威を生じさせないための配慮が足りないように感じる。

初の首相「内奏」 を受けるため、皇居に入られる天皇陛下(2019年5月、皇居・半蔵門)©共同通信社

「昭和天皇が崩御され、平成となった約30年前にも、宮内庁の中には『自分はあくまでも昭和天皇にお仕えするために入庁したのだ』と主張する職員たちがいたそうです。結果、新旧の天皇派に分かれて内部対立が生まれたといいます。現在は対立こそありませんが、上皇職の中には、平成流こそが皇室のあるべき姿だと考えている人が少なくないように感じます。

 上皇侍従長についてもそうですが、上皇女官長の伊東典子さんは明治維新を成功に導いたことで西郷隆盛、木戸孝允と並んで『維新の三傑』と呼ばれる大久保利通のひ孫に当たる家柄です。誰も言葉には出しませんが、上皇職の方が侍従職より格上だと思っている人も上皇職の中にはいるのではないでしょうか。それこそが二重権威の元凶なのです」(同前)

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皇居・二重橋 ©文藝春秋

“二重権威”の問題は解決されるのか?

 宮内庁職員の間の軋轢は、天皇・皇后両陛下がこれから“令和流”を確立されていく中で、自然と解消されていくだろう。ただ、二重権威の問題も時間が解決するのを待つしかないとしたら、それは政府の怠慢としか言いようがないのではなかろうか。

 皇室にも高齢化の波が押し寄せ、女性皇族が結婚によって皇籍を離れていくことで、公務を担う皇族は減る一方だ。皇室全体が先細りする中で、皇室の二重権威など生じさせている場合ではないのだ。

皇居全景 ©文藝春秋