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抽象画なのに、血湧き肉躍る
遊戯かスポーツのような白髪のオリジナル描法は、身体性を全面的に押し出したものである。頭の中でこねくり回した絵ではないゆえか、つくり手の精神性が剥き出しになっているのが感じ取れておもしろい。
また、手を用いず全身を使って描いていると、細かい技術など発揮することは叶わず、代わりに「絵画とは何なのか」「人はなぜ描くのか」といった根源的な問いが浮上してくる。
白髪作品と対峙したときに感じる圧倒的な迫力は、そのあたりに由来するのだろう。抽象的な画面を眺めているだけで、これほど血湧き肉躍る気分になる絵もまたとないのだ。
没後10余年の白髪一雄作品を、これだけまとまったかたちで観られる機会は、東京では初めて。戦後日本美術の重要な一端を担う作品群、たっぷりと堪能したい。