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裸足でロープにしがみつき……大迫力で「人はなぜ描くのか」を問う驚きの描法

アートな土曜日

2020/02/29

 かつてテレビ画面の中から「芸術は爆発だ!」と叫んだのは岡本太郎だったけれど、こちらに並んだ作品群のほうが、よほど「爆発!」している印象がある。東京オペラシティ アートギャラリーで開催中の「白髪一雄 展」である。

 

オリジナル描法「フット・ペインティング」を考案

 白髪一雄とは、戦後日本の美術界を牽引した巨星のひとり。時代を席巻した美術集団「具体美術協会」の中心メンバーでもあった。

 10代のころから油彩画に惹かれ、画家としてのキャリアをスタートさせた白髪は、かなり早い段階で独自の描法を編み出すこととなった。それは驚くことに、足で絵を描くというもの。

 キャンバスを床に敷いて、その上に絵具を置く。キャンバスの上方には天井からロープを垂らしておく。準備が整うと、白髪はロープにしがみつき、裸足になった足裏で絵具を踏み付け、引き伸ばしながらキャンバス上を自在に滑走するのだ。

 

 ほとんど泥んこ遊びかアスレチック競技か? と思わせるこのお絵描き行為を、白髪は「フット・ペインティング」と名付けて、オリジナルな制作手法とした。

 こうして出来上がる画面には、当然ながら人物や動物の像、風景といった具体的なものが表れ出るわけじゃない。どこまでも抽象的な図柄ばかりで満たされているのだけれど、不思議と「ああここには、何やら見知ったものが表されている」との感触がある。そう、「勢い」だとか「流れ」と呼ばれるものが、画面の中に渦巻いているのを、はっきり見て取れるのだ。

 

 手と比べればずっと不器用で不自由な足を用いることで、白髪は繊細さを捨て去る代わりに、大きなエネルギーの動きを生々しく表すことに成功しているのだった。