架空住所で複数登録しているので返金用紙が届かない
さらに、中止となったコンサートについて、振替公演を設定するのか、返金対応するのか、主催者側の動向によってはさらなる損害が出る可能性があるという。
「いまだに主催者側の発表がないのですが、仮に、振替公演が決まったとしても日程が近かった場合、全てのチケットをさばききれるのか、わからない。かといって、返金対応ということになったとしても、チケット転売ヤーに対しては返金されるかわかりません。
というのも、私たちチケット転売ヤーは、友人らから名義を借りたり、架空の住所を使ってファンクラブに加入しているからです。返金用紙を使っての返金だと架空住所なので返金用紙が手元に届かなかったり、ファンクラブ名義人本人の口座に振り込みなどになると私の口座へ入金が出来ないという可能性があります。最悪です」(同前)
ファンクラブ会費×70名義=計28万円
さらにファンクラブの「会費」も丸損だという。
「チケットを先行で申し込むために複数のファンクラブ名義を持つのは当たり前で、私は70名義ほど保有しています。1名義で4000円の会費がかかるので、合計28万円。これらを超える売り上げを出さなければ、黒字にはならないのです。先ほどの返金対応での手数料のマイナスは、今回は約7万円でした。それに会費と合わせて約35万円のマイナスを被っている。そこに130万円のチケット在庫を抱えることになったので、165万円の大赤字。それをどうやって回収するのか。今はそれで頭がいっぱいです」(同前)
こうした転売行為が、2019年6月14日から施行された「チケット不正転売禁止法」に違反していることは自覚しているという。
「『チケット不正転売禁止法』により、基本的にチケットの売買は表立ってできなくなりました。しかし、いくら法律が変わろうがファンがライブに入りたいという欲求は変わらず、チケットの需要はいくらでもある。ですから、私は転売をやめませんでした。しかし、今回の相次ぐ中止で返金対応を蔑ろにするなどして、複数人に警察に行かれると困る。なので、こんなにマイナスや手間をかけてでも1つ1つ返金対応しています」(同前)