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集客にもアイディアを出して尽力

 彼らは、集客にもアイディアを出して尽力した。角監督が観客を増やすため、自腹でチケット10000枚を購入していた。それを、特定の日に合言葉を言ってくれれば無料で配布することにした。「8月3日は上尾市民球場を満員にしよう」という企画がTwitterで告知され拡散された。満員とは成らなかったが、入場者数は1381名。球団の最多動員数を更新した。

 鴻巣の最終戦では「リツイート割」という企画も実施した。ツイートがリツイートされた数に応じて外野チケットを割引する。こうした努力もあって、多くの球団が観客動員を減らす中、昨季の武蔵は動員数を伸ばした。BCリーグの現状は色々と足りないものがあるが、その分変えていける可能性がある。一人ひとりの声も力も、大きい意味を持つのがBCリーグだ。

元ロッテの角晃多監督 ©HISATO

 あるファンは、武蔵を「『色々足りない』ところが魅力」と言う。「戦力も資金も人気も、何もかもが足りませんが、その『足りなさ』こそが『伸びしろ』に感じられます。次に行った時は成長してるかな?という期待感になる。病みつきになる危なっかしさですね」。それまで上手くなる方法を知らなかった選手たちが、レベルの高い指導者たちの指導を経て、驚くほどに成長するのを目の当たりにすることもある。

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 武蔵で言えば、西武のドラフト3位で指名された松岡洸希投手がいい例だ。地元埼玉出身選手として見出され、投手としての経験は浅かったが1年で成長し、NPB10球団から調査書の届く投手になった。

 松岡投手と加藤壮太外野手(巨人育成2位指名)は、ドラフト当日パブリックビューイングでファンの集う場にいた。ファンの大歓声と角監督の男泣きの涙。選手も球団スタッフもファンも一緒に指名を祈り、一緒に歓喜の瞬間を迎えたのだった。「チームがファンを大事にしてくれる、というのも大きな魅力です」。BCリーグ初の選手会がある武蔵。自分のことで必死なはずの選手たちが、ファンのためにも頑張ってくれる。だからファンもそんな選手たちを、より一層応援しようと思うのだろう。

 今季「大使」という役名はないが、TOMMYさん、コバさん、Keetさんは「私設応援団連合」として埼玉武蔵ヒートベアーズを応援し続ける。応援団は関東のほか、福島、関西、北海道と支部があり埼玉以外の団員も多い。それだけ球団に魅力を感じ、2015年BCリーグ参入以来の念願である優勝を見たいという熱意を持つ人々がいる。

 毎年選手の入れ替えは激しく、思い入れれば寂しさも増す。けれどもそれだけに1年1年皆必死で密度が濃い。今年もきっとドラマチックなシーズンが待っている。今年の彼らはどんな企画をし、どんな応援をするのか。スタンドに行けば彼らがいるという安心感は、にわかファンにはとてもありがたい。選手はどんな成長を見せるだろう。昨年途中入団だった吉田大就も、今年は主力となる。楽しみは尽きない。

 元NPBの選手を見にでもいい。気になる選手が入ったから、近所だから、誘われたから、マスコットが好きだから。ちょっと記事を目にしたから。切っ掛けは何でもいい。

 開幕は4/11。BCリーグを見に行きませんか? 一緒に応援してみませんか。

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