新型コロナウイルスの拡散が止まらない韓国では、コロナ拡散の主犯とされる新興宗教団体「新天地イエス教証しの幕屋聖殿」(以下「新天地」)の態度が連日物議をかもしている。

 新天地側が信徒の名簿を故意に隠して政府の防疫に非協力的だったという非難に続き、朴元淳ソウル市長は、李萬熙総会長を「未必の故意による殺人未遂」などの罪で検察に告発した。

 新天地に対する社会的な非難が殺到する中、ついに李萬熙総会長がマスコミに姿を現した。

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2度の土下座パフォーマンス

 3月2日午後3時、新天地の本部が位置するソウル近郊の京畿道加平郡で、李総会長の記者会見が開かれた。記者会見場となったのは、普段は李氏の別荘として使われているとされる新天地研修院「平和の宮殿」の正門前だった。

「新天地イエス教」の李萬熙総会長の記者会見は、教団施設の正門前で行われた ©️時事通信社

 当初はこの敷地内の大講堂で記者会見が行われる予定だったが、京畿道が新型コロナウイルス感染の懸念から施設開放を認めなかったため、新天地側は正門前に記者会見場を設けた。

 突然野外に変更された記者会見場の周辺には、同団体の被害者などがつくる団体「新天地被害者連帯」の会員たちが集まり、“修羅場”を演出した。

「家庭破壊犯、宗教詐欺師の李萬熙を拘束せよ!」

「うちの子をすぐに帰せ!」

「お前だけコロナ検査を受けるのか! 死んでいくわが娘にもコロナ検査を受けさせろ!」

 新天地の信者になって家出し、連絡を絶った子どもを持つ親たちの絶叫は、記者会見の最中ずっと響き渡り、李総会長の声が埋もれて聞こえないほどだった。

「新天地イエス教」の行事の一幕(教団の公式YouTubeチャンネルより)

 88歳の老躯を駆って韓国国民の前に初めて姿を現した李総会長は「永生不死の神」の姿とは程遠かった。小柄ながらガッチリとした体型に、だぶだぶのマスクをつけて現れた彼は、席に座ると聞き取りにくい発音で準備してきたペーパーをそのまま読み上げ始めた。

「31番(目のコロナ感染者)事件と関連し、新天地の代表として国民の皆さんに心から謝罪いたします。故意ではなかったものの、多くの感染者が出ました。最善の努力をしましたが、すべて防げませんでした。国民の皆様に謝罪を申し上げます」

「私たちは力の及ぶ限り最善を尽くし、政府に人的、物的支援を惜しまないつもりです。こんなことがあるとは夢にも思いませんでした。どうしてこんなことが起きたのかよくわかりません」

「このように(コロナ問題は)、私たちだけの問題である前に、あまりにも大きな災いです。今は是非を問う時ではありません。本当に最善の努力を尽くすと、天も面倒を見てくれるでしょう」

 演説の途中、彼は「政府と国民に謝罪する」と席から立ち上がって、2度も土下座するパフォーマンスも披露した。