がんの中でも近年、際立って増加しているのが「子宮頸がん」です。日本国内では毎年約3000人の女性が子宮頸がんによって亡くなっています。
しかも子宮頸がん(上皮内がんを含む)の発症は早期化しています。1975年ごろには発症年齢のピークが60~70歳台でしたが、その後20~30歳台の若い女性に増加するようになり、最近ではピークが30歳台に移っています。若年化が進んだ背景には、セクシャル・デビュー(性交開始)の低年齢化も影響していると考えられています。
このように妊娠・出産年齢と発症のピークが重なるようになってきたため、子宮頸がんは俗に「マザー・キラー」とも呼ばれています。
子宮頸がんをおさえるHPVワクチン
その子宮頸がんを予防する効果があるとWHO(世界保健機関)が認めているのが、HPVワクチンです。実際、世界の多くの国で公費による予防接種プログラムが導入され、2019年2月末までに92か国がHPVワクチンの予防接種プログラムを行っています。
世界に先駆け2006~08年にこのプログラムをはじめたフィンランドやアメリカでは、すでに子宮頸がんの罹患の減少が確認され始めています。
オーストラリアでは子宮頸がんを引き起こす型のHPV感染率が77%低下し、子宮頸がんの前段階である「高度前がん病変」の発生率もビクトリア州の18歳以下の女子で約50%減少しています(オーストラリアがんカウンシル「Success of National HPV Vaccination Program」より)。
2018年10月には、ランセット・パブリック・ヘルス誌に、オーストラリアでは子宮頸がんが2020年頃までに希少がんになると報告されました。希少がんとは、10万人当たり6人未満が罹患するがんのことです。2028年頃には「排除」に相当する10万人当たり4人未満まで、さらに2066年頃までには10万人当たり1人未満まで減る――要するに子宮頸がんは「撲滅」されるとの予測も合わせて報告されています。
他の先進国でも今世紀中に子宮頸がんは撲滅できると見られています。なお、日本における子宮頸がん罹患率は、10万人当たり17人です(国立がん研究センターの2015年データ)。