文春オンライン

ブロックされた「沖縄タイムス」記者が問う、河野太郎防衛相のツイッター何が問題か

「誰をブロックしてるか、いちいちそこまで見ておりません」

2020/03/09
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河野氏に関連して、2回つぶやいた内容とは

 河野氏が極端なのは、自分宛てのツイートがわずらわしくてブロックするだけでなく、わざわざエゴサーチ(自分の名前を検索)して、空中に漂っているツイートを捕捉してはその主をブロックしているらしいことだ。自衛隊は「専守防衛」だが、防衛省トップの河野氏は「敵地先制攻撃」を仕掛けている。

©iStock.com

 私自身も、河野氏に宛てて何かを書いたことはない。ネットの虚空に向かって、2回つぶやいた。

「河野防衛相が辺野古新基地について『県の協力をいただいて合理的に工事ができる方法がとれればコストを下げられる』。強盗が『さっさと金を出せば手間がかからないんだよ』と言うようなもの。『そもそもお金を取らないでください』と言う権利は被害者にないのか」(2019年9月19日)

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筆者のツイート(2019年9月19日)

 米軍のための辺野古新基地建設は沖縄の反対を踏み破って続き、工費も膨張し続けている。このツイートの時点では防衛省が総額の見通しさえ示せない異常事態に陥っていた(同年12月に、当初予算の3倍近い約9300億円と示された)。

 河野氏の発言は、工費膨張の責任を沖縄県に転嫁するものだった。1度は「盗っ人猛々しい」と書こうとして思い直した。沖縄の宝である美しい海を強奪しているから、強盗に例えることにした。言葉は強いかもしれないのだが、沖縄には「そもそも工事をやめてください」と言う当然の権利がある。

 もう一つは同年10月1日のツイート。外相時代、韓国に対して「極めて無礼でございます」と言い放つなど、強気一辺倒だった河野氏が、防衛相に就任して米軍に向き合う段になると姿勢が一変した。はるか格下の中将に会うためにわざわざ米軍基地内に足を運び、辺野古新基地建設を約束した。その卑屈さを批判した。

筆者のツイート(2019年10月1日)

「誰をブロックしてるか、いちいちそこまで見ておりません」

 どちらが河野氏の目に留まったのかは分からない(私がブロックされていることに気づいたのは護衛艦が中東に出発した今年2月2日だった)。河野氏自身も覚えていないようだ。会見で防衛省担当の同僚が質問すると、「誰をブロックしてるか、いちいちそこまで見ておりません。誹謗中傷うんぬんについてはブロックしています」と答えた。

 誹謗中傷とは「根拠のない悪口を言って相手を傷つけること」。私は河野氏の悪口を言ったつもりはなく、沖縄が新基地に反対している事実に基づいて河野氏の政策を批判したつもりだった。権力に当然向けられる批判を反省材料として生かせない、むしろ批判自体が許せない。どんどん見識が失われ、度量も小さくなっていく。河野氏に限らず、権力の全体傾向が表れていると感じる。

河野氏は自身のツイッターとブロックについて、2019年9月13日の会見でも「誹謗中傷している人には遠慮いただきたい」と説明していた。 ©時事通信社

 河野氏は会見で、「不愉快な思いをする必要はない」と気軽にブロックしていることを隠そうともしなかった。「個人が暇つぶしでやってるものについてとやかく言われることはない」とも。しかし、大臣のツイートは「個人の暇つぶし」では断じてない。食べたものと遊んだことだけを書くようになるまでは、とやかく言い続ける。