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”ソフトバンクブランド”の150km左腕・長谷川宙輝に見る夢

文春野球コラム オープン戦2020

2020/03/11

「ソフトバンクブランド」とヤクルトファンは俗に言う。「ソフトバンクから来た」というだけで、ヤクルトファンには結構な期待株なのだ。ソフトバンクは層が厚すぎて芽を出すのが並大抵ではないから、支配下になれない選手でも他のチームではレギュラークラス、ということが大いにあり得る。

 2年前に山田大樹がやって来た時も、「ソフトバンクだから」期待した。前年にウエスタンの最多勝ということもあった。1年目に一軍登板2試合のみで防御率15.88という結果になっても、「こんなもんじゃないはず」と雪辱を期して過ごした。そして昨年、先発投手陣の苦しい中で5勝を挙げてくれた山田大樹には感謝したし、雌伏が長かった分とても嬉しかった。今年も期待したい。

「ソフトバンクブランド」の150キロ左腕

 さて、今年はとびきりの「ソフトバンクブランド」が登場した。長谷川宙輝。こちらも「ひろき」だ。21歳と若い。ソフトバンクの2016育成ドラフト2位入団。「150キロ左腕」と呼び声も高く、首脳陣の評価もファンの期待も高まる一方だ。

ソフトバンクを自由契約になり、ヤクルトに入団した長谷川宙輝 ©HISATO

 聖徳学園中から聖徳学園高へ進み、中里英亮監督にその素材を見出された。プロなど考えてもいなかった投手が、体を作り、フォームを整え、考え方を変えて成長した。3年になる頃には「西東京のドクターK」と呼ばれるプロ注目の投手となった。聖徳学園高校は内野ほどのグラウンドしかなく、部内に激しい競争があるわけでもない。その中でも努力を重ねて育成ドラフト指名を勝ち取った。

 プロ入りした「最速144キロ」の投手を、「150キロ」に大きく成長させたのはソフトバンクだ。1年目は三軍から、体作りをして二軍デビュー、2年目にはキャンプA組合流、紅白戦登板、オープン戦登板も果たす。フォームを崩して三軍落ちした時期もあったが、その分じっくりフォームを作り直してきた。

 文春野球でホークス担当の田尻耕太郎さんも、2018年には「キャンプMVP」として大いに期待する記事を書かれている。ファンにも「左のエースに」と期待されてきた。育成選手は3年で自動的に自由契約になる。その隙を狙ったと言っては何だが、期待株をそのまま頂いてしまったヤクルト。少々申し訳ないが、こちらも大事にするので許して欲しい。

 ファンは俄然盛り上がっている。長谷川は小中とヤクルトファンで、神宮でもよく観戦していた。憧れの選手は青木宣親だった。最終的に、ヤクルトに来ると決めたのは長谷川自身だから、これはいい選択だったのだと、長谷川自身が証明するしかない。