「上位はみんな強い。自分もしっかりいいところを出さないといけない。(今場所は無観客で)雰囲気に慣れていかないと」
1月に行われた大相撲初場所で、前頭の最下位に当たる「幕尻」での優勝(14勝1敗)を果たした徳勝龍。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、史上初の無観客開催となった春場所(3月8日~)の初日、初場所で優勝を争った正代との一番に敗れたあと、こう語った。
“花のロクイチ組”の2人
何もかもが異例尽くしの春場所にあって、初場所で史上2人目の幕尻優勝、奈良県出身の力士としては98年ぶりの快挙をなし遂げた徳勝龍が、上位陣総あたりとなる今場所でどのような取り組みを見せるかに大きな注目が集まっている。
発売中の「文藝春秋」4月号では、ともに昭和61年生まれ、33歳である荒磯親方(元横綱・稀勢の里)との同学年対談が実現した。同年度生まれは、元大関・豪栄道、妙義龍、勢、碧山ら関取に出世した力士が多く、角界では「花のロクイチ組」として知られている。普段から交流のある荒磯親方を相手に、徳勝龍が「33歳、遅咲き優勝」を果たすまでの「秘密」を語った。
荒磯 初場所の千秋楽は、ラジオの解説の仕事があったから現場で見ていたけれど、あれほど大きな拍手が起きたことはない。トク(徳勝龍)の優勝が決まった瞬間、お客さんみんなが心の底から祝福している大歓声だった。最後に、ああして大関(貴景勝)を圧倒して勝ったのは大きかったね。
徳勝龍 あれは一生忘れられないっす。上手を取っていたんで、何とか残すことができましたけど、ぎりぎりでした。寄り切る前に受けた強烈な突き落としに、大関の意地を感じましたね。勝ち名乗りを受けたときは、「やりきった、15日間しっかり終わった」という思いしかなかったです。
荒磯 いやいや、そんな冷静じゃなかったよ。花道を通るときには男泣きに泣いていたでしょう(笑)。
徳勝龍 少し、泣きすぎました。
徳勝龍は「同学年の希望の星」
荒磯 でも、あのまま下位と戦って優勝するのとでは価値が違ってくるから。
徳勝龍 そうっすね。あとから言われちゃいそうですもんね。
荒磯 価値ある優勝だったと思う。俺はもう引退したから無理だけど、トクはこれからまだ優勝のチャンスがいくらでもあるはず。まだ33歳だからね。まだね。
徳勝龍 みんなにそう言っていただくんですけどね。でも、自分も本当にそういう気持ちですね。「まだ」って感じはあります。
荒磯 まだ33歳と思って、「同学年の希望の星」として頑張ってほしいよ。