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「コンサート中止で3月の収入もゼロ」 新型コロナで“貧困”に苦しむイベントスタッフ、演奏家

2020/03/16
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「こんなことで貯金を取り崩したくなかった」

――現在はどのように生活しているんですか?

中田 今は富山の実家にいます。私以外にもエンタメ業界で働いている友人は、みんなすごく困っていますね。アルバイトや契約社員でも現場に出勤しないと給料が発生しなかったり、という雇用形態で、私のように実家に戻っている人も多いです。実家なので食事の心配はないけど、東京で借りているマンションの家賃7万円はいつもどおり引き落とされますよね。

 貯金で家賃は払えるけど、こんなことで貯金を取り崩したくなかったです……。仕事がなくなってしまったので、マンションを引き払って地元に戻るか、東京に残るのか、両親と話し合って決める予定です。

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©iStock.com

フリーランス演奏家の憂鬱

 中田さんのように、人生の岐路に立っているのはイベントスタッフだけではない。舞台に上がる演奏家もまた、働く場所を失い困窮している。塚本奈々さん(仮名・25歳)は、フリーランスのトランペット演奏家として、さまざまな演奏会に出演していたが、「新型コロナが流行して以降、演奏に関するすべての仕事がなくなった」とため息をつく。

塚本奈々さん ©真島加代/清談社

――普段、フリーランスの演奏家としてどんな仕事をしているのですか?

塚本奈々さん(以下、塚本) 演奏会に出たり、教育機関の吹奏楽部で指導をしたりする依頼が多いです。自分で演奏会を主催することもありますね。指導や演奏会などで得る収入は、だいたい月に10万円ほど。仕事ではありませんが、フリーランスの演奏家にとっては、オーケストラのオーディションに出るのも重要な活動のひとつです。私はトランペットだけでは生活ができないので、掛け持ちでスーパーのアルバイトをしています。

――もともとギリギリで生活していたところに、新型コロナが流行したんですね。

塚本 そうなんです……。予定していた演奏会は規模を問わず全部中止、教育機関もすべて休校で部活動も禁止なので、生徒の指導もできずトランペットに関わる仕事は皆無です。部活の指導は1回8000円ほどですが、貴重な収入源なんです。

 芸術関係の知り合いは、みんな仕事がなくなってますね。引っ越しやティッシュ配りの短期アルバイトをして、どうにか生活しているみたい。私の場合は、もともとのアルバイトも明らかにシフトが減らされています。営業時間も短くなってるし、お客さんも少ないから社員だけで手が足りてるんですよね。