令和の皇后となられ、弾けるような笑顔、華やかなファッション、外国賓客に対する堂々たる振る舞いを見せられてきた雅子さま。コラムニストの矢部万紀子さんが見つめ続けた「雅子さまらしさ」とは何か。『雅子さまの笑顔 生きづらさを超えて』(幻冬舎新書)刊行を記念して、文春オンラインへの寄稿を再公開します。(初出:2019/8/25)
令和になって初めての終戦の日、全国戦没者追悼式の中継をNHKで見た。戦後生まれの天皇陛下と皇后雅子さま。どのように「戦争」というものに向き合うのか。同年代のひとりとして、知りたいと思った。
安倍首相の式辞の後、お二人は戦没者を祀るたくさんの菊に向かって歩かれた。正午の時報を合図に1分間の黙祷、そして陛下による「おことば」。その間、テレビ画面はお二人の姿を横、そして後ろからとらえていた。
それを見て、気づいたことがあった。
あ、雅子さま、グレーのストッキングをはいていらっしゃる。美智子さまから受け継がれたんだ。
その日に陛下が述べられた「おことば」と重なった。上皇さまの「おことば」から「深い反省」という言葉を受け継がれた陛下。受け継ぐべきは受け継ぐ。同時に、新しくするところは新しくしていく。そういう姿勢も示された。そんな令和流に触れ、雅子さまへの期待も高まった。きっとこれから、新しい雅子さまを見せてくださる、と。
グレーのストッキングは、上皇后美智子さまの定番
順を追って、私の思考回路をご説明させていただく。まずは、ストッキングの話から。グレーのストッキングは、上皇后美智子さまの定番だった。どんな服装でも美智子さまは基本、グレーのストッキングを選ばれた。
私の手元に「女性セブン」2014年11月13日号がある。美智子さまの傘寿を記念した特別増刊号で「美智子さまの来し方 雅子さまの明日」とタイトルが付いている。
表紙を飾っているのが、同年6月に沖縄を訪問された時の美智子さまのお写真だ。スーツと小さな帽子はどちらも白を基調とし、上布と言うのだろうか、沖縄らしい生地がアクセントにあしらわれている。そしてストッキングは、はっきりとグレーとわかる色で写っている。