グレーは「生々しくもなく目立ちもしない」
美智子さまのストッキングがグレーという話を私が聞いたのは、平成が始まってまだあまり時が経っていない頃だった。教えてくれたのは、宮内庁担当のとある女性記者。彼女は両陛下を近くで取材することになり、まず驚いたのが美智子さまのストッキングだったと語り、こう分析していた。
「ベージュのストッキングだと、肌の色が出て生々しい。黒だと変に目立ってしまう。生々しくもなく目立ちもしない。それがグレーのストッキングなんでしょうね」
すごく腑に落ちる解説だった。同時に美智子さまが皇室に嫁いで以来のご苦労を思った。小さなことも一つひとつ模索し、ご自分流というものを獲得していったのだな、と。
美智子さまのファッションは、さまざまに論じられている。先の「女性セブン」増刊号にも、「美智子さま“装いの心得”」という記事が載っていて、ファッションに込められた美智子さまの「ふたつの思い」があると書かれていた。ひとつが質素倹約の精神、もうひとつが日本の伝統の精神だと。
だが、日本の伝統を生かした服装を質素倹約しながら着ていくとして、ストッキングはどうすればよいのか。民間から皇室に嫁いだ初めての女性として、悩まれたに違いない。直接または間接的に国民の目に触れることを前提に、皇族としての気品を感じさせるファッションを模索された。ストッキングの色の選択も些細なようだが大切なことで、美智子さまはグレーという「解」にたどり着かれたのだ。
さて話を雅子さまに戻す。皇后になられ、初めて出席した戦没者追悼式でグレーのストッキングをはかれていたことに、私は勝手に感動した。