さらに、モンゴルは2月1日の時点で、モンゴル国民の中国・香港への渡航を禁止したほか、中国人と中国に滞在経歴がある外国人の入国を全面禁止にした。そして2月末には、なんと中国訪問後のモンゴルのバトトルガ大統領と外相、その他の政府高官らを、「予防的措置」として14日間の隔離下に置いた。
モンゴルは中国と経済的な結びつきが強く、友好関係にある。しかし、何よりも自国の防疫を最優先し、果敢な措置に打って出たのだった。
SARSでの“痛い経験”を生かした台湾
台湾の蔡英文(ツァイインウェン)政権も防疫優先を掲げ、水際対策と国内の感染連鎖阻止で成功してきた。台湾は中国本土と物理的に近く、経済的にも関係が深いにもかかわらず、国内感染者は252人、死者は2人にとどまっている。
台湾では、国内感染者が出る前の1月15日、先手を打って新型コロナを「法定感染症」に指定した。最初の国内感染者が確認されて10日以上経った1月28日に「指定感染症」をようやく閣議決定した日本政府の対応と比べると、その迅速さが際立つ。また、台湾の教育部(教育省)は2月2日、小中高校の春節の冬休みを2週間延長し、24日まで休校にした。台湾はさらに、2月7日から中国大陸在住の中国人の入国を全面的に禁止した。
台湾では、2002年から2003年に流行したSARSで37人が亡くなった。これを受け、台湾政府は伝染病予防法を改正して、政府が防疫のために必要と判断した物品や設備などを徴用できるよう、集中的な権限を有する「指揮センター」の設置を可能にした。過去の痛い経験を踏まえ、事前の法整備や危機管理体制を着実に強化してきたのだ。国家の危機には「初動と備え」がいかに大切か、台湾の例は大事な教訓を示している。
スマホアプリで“接触者”を追跡する
またシンガポール政府は、徹底した接触者の追跡と隔離を実施して、感染者683人、死者2人に封じ込めている。3月20日には感染者に接触した人を追跡するスマートフォン向けアプリの提供を始めた。さらには、隔離命令に従わない住民や、国外移動について偽情報を提供した旅行者を処罰している。
総じて、東アジア諸国は欧米と比べて、権威的な政権が多く、社会にも調和を優先する文化が強い。このため、不要の接近や接触を控える「社会的距離」の確保やマスク着用の励行など、より厳しい公衆衛生の方策が市民の間でも自然と取られている。
一方、新型コロナ対策で失敗している国はどこか。筆者は、いわゆるオーバーシュート(爆発的な感染拡大)を防げず、大勢の国民の生命を守れていない国家を失敗国だとみなしている。国家が本来、真っ先にやらなければならない役目は、国民の生命と財産を守ることのはずだからだ。