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新型コロナ対策 持ちこたえるアジア、感染爆発を防げなかった欧米――何が明暗を分けたのか?

モンゴルと台湾の“水際作戦”が成功した理由

2020/03/27

 その意味で、すでにオーバーシュートが起きた中国やイラン、イタリア、スペイン、そしてアメリカは感染対策で失敗した国といえる。現在は、それらの欧米の国々がホットスポット(多発地点)となり、アジアに感染拡大の第2波をもたらす「逆輸入」が始まっている。欧米の大学で学んだ留学生や旅行者がアジアの本国に帰国して、新型コロナを持ち込んでいるケースが目立ってきている。

オーバーシュートが発生した国の特徴は?

 そもそもの発生地である中国では、初動の遅れや判断ミス、情報公開の不足が感染拡大に拍車を掛けた。習近平国家主席が権力集中を進めた結果、武漢市をはじめとする地方政府が、情報公開などの面でも権限がなく機能不全になったと指摘されている。また、中国は新型コロナの感染者の定義を何度も変更してきた。このため、そもそも中国の感染データには不信感が根強い。

 オーバーシュートが発生したその他の国は、経済や貿易、観光、移民などの観点から、中国との関係の深い国が目立つ。中でもイタリアは、中国が提唱する巨大経済圏構想「一帯一路」の主要拠点であり、何百年も前から経済的に強くつながっている。近年でも中国系住民が増加しており、現在では全土で約40万人に達するとされる。

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新型コロナウイルスの感染者を治療するイタリアの病院 ©AFLO

 失敗国は、イタリアのように水際対策が甘く、感染者を見つけ出せていなかったり、感染者や接触者の追跡と隔離をうまく実施できていなかったり、あるいは医療崩壊を起こしてしまっているケースが目立つ。

 隣国の韓国はどうだろうか。新型コロナのPCR検査体制が整っていなかったため、逆に医療崩壊することなく現在に至っている日本に比べ、検査態勢が整っていた韓国は当初、陽性となった人全員を入院させていた。しかし、途中から治療方針を転換。感染患者の症状を4段階に分け重篤、重症者を優先的に治療するトリアージ(治療の優先度識別)を導入した。このため、大邱での集団感染発生にもかかわらず、医療崩壊を回避できている。

現代社会でうまく生き残るよう進化・変異した?

 新型コロナの急速な感染拡大の背景には、ヒト・モノ・カネ・情報のグローバル化の進展がある。昔と違い、格安航空券で大陸から大陸への移動も簡単にできる。これはウイルスにとっても地球が狭くなったことを意味する。

©iStock.com

 また、日本をはじめとする先進国は、かつてない高齢化時代に突入している。お年寄りは若者に比べ、持病などを持ち、感染症から体を守る免疫が働かなくなることが多いだろう。私には、新型コロナはまさにこうした現代社会でうまく生き残るよう進化したり、変異したりして誕生してきたように見えてしょうがない。

 こうした難敵のウイルスと対峙するために、成功国と失敗国の分析から得るものは大きいだろう。

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