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コロナ・パニック「それでも私が告発をやめない理由」――岩田健太郎医師インタビュー

2020/03/29

「すごい悲惨な状態で、心の底から怖いと思いました」

 神戸大学医学研究科感染症内科教授の岩田健太郎医師が、新型コロナウイルスの感染者が続出する「ダイヤモンド・プリンセス号」の内部に入り、その惨状をYouTube動画で「(船内は)ウイルス培養器」と暴露したのは2月18日のこと。世間からは「勇気ある行動」と賞賛の声が挙がる一方で、「恐怖を煽った」との批判も少なくなかった。

ダイヤモンド・プリンセス号

 あれから1カ月半、世界中で人々の生活は一変した。ヨーロッパ各国は相次いで「外出禁止令」を出し、日本でも3月28日、29日の週末は東京都と隣接4県で外出の自粛が求められた。

 しかし、3月28日には国内で1日に確認された感染者の数が、初めて200人超え。国内で確認された感染者の数は、空港の検疫で見つかった人やチャーター機で帰国した人なども含めて計2436人、死亡者は計65人となった。そのうちクルーズ船の乗客・乗員の感染者は712人、死亡者は10名にのぼる(3月28日時点)。

 3月4日、下船後の「自主隔離」を終えた岩田医師と、『週刊文春WOMAN』 はメディアで初めて対面した。『週刊文春WOMAN』2020春号に掲載した岩田医師のインタビューを、緊急転載する。

◆ ◆ ◆

「誰かを非難した」誤解を与えたことは、申し訳なかった

——クルーズ船の感染対策の何が問題だったのでしょうか。

 まず、ウイルスは目に見えないので、ウイルスがいる危険な感染区域と全くいない安全区域、いわゆる「レッドゾーン」と「グリーンゾーン」の分離が感染対策の鉄則です。船内でそれができていないのは一目瞭然でした。ウイルスが付着しているかもしれない防護服を着た人がグリーンゾーンに入ったり、検疫所の人が患者とすれ違って、「今、すれ違っちゃいましたね」と苦笑いしている場面にも遭遇しました。

『週刊文春WOMAN』2020春号

 私は20年以上、感染症の研究をしてきて、アフリカのエボラ出血熱や、03年の中国のSARSなど、感染症の対策現場に立ち会ってきました。それでも、今回ほど身の危険を感じたことはなかった。

——批判が集まるとたちまち動画を削除したことから、先生の告発を信用できないという声もあります。

 私は船内から助けを求める連絡を受け、関係筋を伝って災害派遣医療チーム(DMAT)に同行するかたちで、中に入りました。その後、「誰か」の指示が出たため、2時間ほどで「出ていきなさい」と締め出されましたが。それでも「むちゃくちゃな状態」であることは明らかで、少しでも悲惨な現実を知ってもらいたくて動画をアップしました。再生回数は100万回を超えましたが、後に「船内の環境が改善した」との情報を得て、2日後に削除しました。結果的に誰かを非難しているかのような誤解を与える面もあり、その点は申し訳なかったと思っています。