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日本の対応は中国より遅れている

——PCR検査が保険適用になりました。

 無症状であっても全例PCR検査すべきという議論が巻き起こっています。

 しかし、現状では一般の検査機関での準備が整っておらず、優先すべきは重症者への検査です。検査の精度も万能ではなく、結果に対する誤った解釈で感染者数を増やしてしまうリスクも考えると、全例への適応は検査の無駄遣いです。

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 ただ、必要な検査ができないのも問題なので、検査キャパの拡大自体には反対していません。

——岩田先生は情報提供のあり方について、日本の遅れを指摘されていますね。

 米国のCDCは新たな感染症が発生すれば、安全策を講じるうえで必要な情報提供をします。中国でも、SARSの際に実態把握に苦労した教訓を生かし、中国版CDCが今回の新型コロナウイルスでは、いち早くウイルスの遺伝子型を特定し、感染状況を世界に発信しています。

 それに比べて、日本は09年に発生した新型インフルエンザの封じ込めに苦心したにもかかわらず、これを教訓とせず、日本版CDCを作らなかった。感染症の専門家の養成もしてこなかった。こうした“専門家軽視”の姿勢が今回のクルーズ船の惨事に繋がったと考えます。

©︎iStock.com

——今後、私たちは新型コロナウイルスとどう向き合えばよいのでしょうか。

 国立感染症研究所は、クルーズ船内の感染流行の度合いを示す「エピカーブ」を2月19日に発表しています。一見すると多くの患者が隔離前から感染しており、二次感染者はごくわずか。隔離政策が成功したかのように理解できる結果になっています。しかし、データは不完全なもので、発症者不明のデータも現時点で多くあります。このデータの不備も動画で指摘しましたが、「データはあるのにないと勘違いしている」と的はずれな批判もされました。「データがある」と「データが完全にある」は同義ではないのですが。

 ご存知のように下船後の発症者は国内だけではなく、オーストラリア、米国、香港などで発見されており、まだ予断を許さない状況です。

 今はいかに封じ込めるかが大事で、手指消毒や閉鎖空間でのイベントを避けるなど、個人で、できることをすること。中国で封じ込めできつつあるのだから、我々にも希望はまだあるとは思います。

取材・構成:内田朋子

岩田健太郎(いわたけんたろう)

1971年島根県生まれ。島根医科大学(現・島根大学)卒業。沖縄県立中部病院、ニューヨーク市セントルークス・ルーズベルト病院、同市ベスイスラエル・メディカルセンター、北京インターナショナルSOSクリニック、亀田総合病院を経て、2008年より神戸大学。神戸大学都市安全研究センター医療リスクマネジメント分野および医学研究科微生物感染症学講座感染治療学分野教授。神戸大学病院感染症内科診療科長。