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「く・も・わ」を知っていても……

「皆さんは、『く・も・わ』をご存じでしょうか。小学生から大学生にまで広く使われている図です。『く』は『比べられる量』、『も』は『元にする量』、『わ』は割合のことで、『元にする量×割合=比べられる量』という式を視覚的に表しています。

「く・も・わ」の図

 円を上下に分ける横線は『÷』、左右に分ける縦線は『×』を意味します。これは、求めたいものを隠し、残ったふたつを計算すれば答えがでる、という図なのです。

 例えば、『比べられる量』を求めるには、円の下半分にある『も』と『わ』を掛けて計算します。

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 しかし、この図は、数学の本質的な理解を促すものではありません。%とは何か、を理解しなくても、『く・も・わ』に数字を入れれば答えが導かれるからです。問題文を読んで、どれが比べられる量でどれが元の量なのかわからない生徒は、誤った答えを出してしまいます」

このままでは取り返しのつかないことになる

 だが、スマホの計算アプリを使えば瞬時に答えが出るいま、計算の考え方にどうしてこだわるのかと思う人も多いだろう。

「なぜ数学のレベル低下が国家の危機になるのか、大げさな話だと思われる方もいることでしょう。しかし、まず、ご理解いただきたいのは、数学はあらゆる学問の基礎ともいえる学問だということです。

©文藝春秋

 数学の本質は、計算や公式などではなく、論理的思考力です。客観的な数字を使って、一歩一歩、結論へと導くことが重要です。

 数学的思考、つまり論理的思考力が低下するということは、問題を筋道立てて考え、それをきちんと他人に説明する力がなくなっている、ということなのです」

 さらに、由々しきことに、日本では「数学嫌い」の子ども達が多くいるという。日本の子ども達の数学的、論理的思考力はなぜ大きく低下し、数学離れが進んだのか。その原因や対処法についての芳沢氏の解説「『%がわからない大学生』の読解力」は、「文藝春秋」4月号および「文藝春秋 電子版」に掲載されている。

出典:「文藝春秋」4月号

 芳沢氏は話の最後、深刻な面持ちでこう締めくくった。

「『%が分からない大学生』は、決して笑い話ではありません。日本がだめになっているひとつの象徴なのです。今、日本の数学教育を立て直さなければ、取り返しのつかないことになってしまうと思います」

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文藝春秋

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「%がわからない大学生」の読解力