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1995年の吉井理人 ノムさんに“雷嫌い”をバラされたあの日

文春野球コラム2020 90年代のプロ野球を語ろう

2020/03/30
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野村克也監督との出会いで「人生が変わった」

 話を95年に戻す。吉井はストレートとシュートのコンビネーションが冴え、10勝7敗。近鉄時代の88年以来となる2桁勝利を挙げた。日本シリーズでも3戦目に先発。勝ち負けはつかなかったが試合に勝利、この年は日本一となる。

「スワローズでは2度、日本一を経験させてもらった。あのトレードがなかったらメジャーにも行くことは出来なかったし長く野球をやる事もなかった。第2のスタート。人生が変わった」

 だから選手たちのトレードが決まると投手コーチとして「良かったな。チャンスだな」と自身の体験を元に送り出している。なによりも近鉄から移籍したことで名将・野村克也監督と出会った。

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「勢い一本で野蛮に投げてきた自分に考える野球の大切さを教えてくれた。理由、根拠を作って投げなさいと最初に言われた時はなんかめんどくさいと思ったけど、しつこく言われるうちに出来るようになり分かるようになった。だからこそ長い事、野球が出来た。アメリカにも行けた」

 人生を変えた恩師は2月に急逝した。石垣島キャンプで訃報を聞いた吉井投手コーチは天を仰いだ。そして「ボヤくというイメージが先行しているけどワシから見たら情の人だった」とつぶやいた。雷嫌いという代名詞が生まれたのも野村監督の発言から。そこに愛を感じたからこそ事を受け入れ今も懐かしい思い出として語る。

 今年、マリーンズの投手陣に日本中の野球ファンの注目を集めるルーキーが加わった。高校時代にはMAX163キロを記録した佐々木朗希投手だ。吉井投手コーチはデビューに向けた入念な育成プログラムを考え指導をしている。理由、根拠を元にした緻密なプランである。

吉井理人コーチと佐々木朗希 ©梶原紀章

梶原紀章(千葉ロッテマリーンズ広報)

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